博麗神社で仙人に遭遇する。
片腕に包帯を巻いている珍しいタイプの仙人だが、私には鬼の特徴に近いものを感じる。
私に長い寿命が欲しいかと尋ねられたので、まっぴらご免と返しておいた。
どいつもこいつも私を妖怪にしようとしているのか。
私の答えに予想外と言わんばかりにきょとんとした表情を見せる仙人。
普通の人間はそう答えないと言いたいのか。
冗談じゃない。 八雲商事の妖怪達とあのまま延々と縁があるままで生きていたら
こっちの身が持たない。
精神を保つために自分のアイデンティティを再確認する。
大いに結構だ。 だが人間ってのは忘れたいこともたくさんあるのだ。
そういうものまで確認作業をしていれば普通は悶絶する。
いや、悶絶することまで修行の一環と言われればそれまでだ。
大体幻想郷では寿命を延ばす手段なんかいろいろあって
意外とお手軽に寿命を増やすことができる。
魔法や妖術もあるし、薬だってある。
人間やめればいくらだって寿命を引き延ばすことは可能だ。
その手のアイテムは生まれてはどんどん幻想郷に送り込まれているからだ。
もっともここにいたら寿命を延ばすよりも限られた寿命をどう生きるかが重要だと言うことに
直ぐに気づくことになる。
ちょっと考えればわかることだ。
寿命が延びて良いと思うのはずっと生活ができると保証されているひとだけなのだ。
寿命が延びても所得がなければ生きていけないのは当たり前のことだ。
つまり、寿命が延びても不自由なく生きていける保証なんてないのだ。
寿命を延ばしたいと考えることこそが贅沢な悩みなのかも知れない。
だから私は仙人にこう言ってやった。
「あんたが私の生活を保障するって言うのなら寿命を延ばすけどな」と。
仙人は呆れて肩をすくめるばかりだった。