□月 ●日  No1475 寒い話。


あちこちでは稲刈りも始まってすっかり秋の色合いが強まっているはずなのに今日も酷い熱帯夜。
現地法人の連中で幻想郷住民にも関わらず怪談話をすることに。
しかし、怪談話といっても多少の怪談はちっとも反応が無い。 幻想郷で勤めている人には
常識で通ってしまう。 人の命を奪う妖怪の話をしてもこの点はリアリティに欠けるとか
考察が始まってしまい、涼むどころか白熱する有様である。
こういう時は妖怪達の意見を聞くのが一番と言うことで、たまたま通りかかった冴月を呼んだ。
皆で彼女を呼んだのを後悔したのは言うまでもない。


冴月が話したこと。それは妖怪にとって真の恐怖は寧ろ人間であるということだ。
人間は同胞に対してもどこまでも残酷になれると冴月は言う。
米帝の兵士と話をしただけの少年が、リンチにあって殺害された挙げ句身体にC4を仕掛けられた
という話もあるという。


妖怪達のもたらす恐怖なんてものは形骸化されたものであり、対策を取ることができる。
だが人間がもたらす恐怖は絶対的な対策なんて物はない。
感情に支配され、しばしば非合理な行動を行う人間を妖怪達は皆恐れている。


だが、その程度の人間の業はこちらだって知っている。
彼女が真に恐怖を覚えたのはもっと別の部分だった。
そんな残酷行為をしている青年と知り合ってその人と話をした。


皆はさぞや極悪人だと思うかも知れない。
だが彼は話してみれば普通の好青年であった。
寧ろ好感が持てるほどの良い笑顔を持っていたという。
それは猫かぶりなのかと尋ねると、そうではないことも分かった。
彼らは本質的に普通の青年だった。


だが、彼らは時にとても残酷な行動をする。
彼らもまた親や親戚を同じような手段で怪我させられたり殺されたりしている人だ。
冴月は思った。 人間と妖怪、何処が違うのだろうかと。


一応、みんな涼しくなったが、話を聞かなきゃ良かったと思う。
今後は気をつけたいと思うが、ちょっとした経験になったかなとも思い
今日の日記としたい。