□月 ●日  No1476 小兎姫の嘆息


朝 前日が夜勤だったので遅めの起床の筈が思った以上に早く起きてしまった。
こういう時は、たいていあまり良いことにならないわけで。
出勤したら局長室が酷いことになっていた。
内装は剥がれ落ちて所々ボードが見えている。 天井は断熱材が垂れ落ちて酷い有様だ。


メガネに聞いたら、昨日女性が尋ねてきて局長と交戦したらしい。
一体、ここの警備がどうなっているのかというと、理香子が連れてきた女性だと聞いてびっくり。
彼女が連れてきてたとなると妖怪であれ誰であれ理由はきちんとある筈。


櫻崎に昨日の予定を尋ねてみる。
会う人の欄を確認すると、そこに聖白蓮という名を発見する。
聖白蓮。遙か昔に封印されて現在は幻想郷で隔離されている危険人物と聞いている。
何故幻想郷の人物がここに来ているのか。
理香子は何を考えているのだろう。


程なくして局長が出勤。 怪我は殆どないので取りあえずほっとする。
元々局長も妖怪退治のプロだ。能力的にも私たちの力を凌駕すると言われている。
まだまだ現役クラスの戦闘力は残しているということなのだろう。


局長に話を聞くと、「見解の相違だ」と言われた。
聖白蓮とこの霊能力の前身が繋がりがあるという話は聞いたことがある。
実際、ダブルエージェントとして雲居一輪があちらに派遣されているし、
ナズーリンも局長の紹介だった筈だ。


妖怪と人間との共存についての考え方の違い。 局長はそう言っていた。
現代の妖怪は能力を自分の個性と捉え、能力を最大限に生かして
社会に影響を与えている者もいれば、差別や偏見を恐れて隠れて暮らしている者もいる。
中には偏見に耐えかねて人間に反旗を翻す者もいる。
そうした者は霊能局が取り締まっているのが現状だ。


局長は妖怪の取り巻く環境は変わっているという。
最近は映画などを通して妖怪の存在をわかりやすい言葉へ変換して紹介する手段も
採られていて、今回の騒動も映画のロケと言っただけで警察に軽く小言を言われるだけで
済んだらしい。 なんという平和ボケな話だろう。
弾幕や魔力を見て多少は驚くものの恐怖すら感じない現代人を見て複雑な表情で
聖白蓮は帰ったという。 うちの局員すら最近のCGは凄いとしか言わなかったからさもありなん。


帰りがてら理香子を捕まえて聖白蓮を何故連れてきたのかと詰問したら、
前日のお酒が入っていた、ご免と言われた。 
一応古巣だからと言うことで案内したというけど、彼女の真意はいまいち掴めなかった。
後でもう一度聞いてみようと思う。