□月 ●日  No1581 製本作業


今宵も朝倉の出す混怪なるイベント用の謎本製本作業を手伝わされる。 
面子は6人ほど。今までは妖怪達を動員していたがとうとう人手が足りなくなったらしい。
たった数枚の紙を製本するだけだというのにどれだけ時間を掛けているのか謎だ。


しかしこの本はただの本ではない。この本を買いに来るのは殆ど妖怪ばかりであるらしい。
そして配置位置も人気サークル扱いだというのである。
何故こんな下手な絵が書かれた薄い本がそんなに人気があるのかと思うのだが。


謎の粉を混ぜた特製のトナー粉を用いた代物で、やっぱりナスカの地上絵としか思えない絵が描かれた
薄い本だが作る冊数が500冊あまりと半端ない。
印刷屋に頼めばいいだろうと思うのだが、特製トナーを利用できるのが会社のものだけしかないという
理由だそうである。 あくまで本人談だが。


本当にそうなのかとしつこく聞いたら、無言で謎の機械を渡された。
ハンドスキャナみたいな装置を通すと細かい弾幕がドットとなって映像が映し出された。
幻想郷で最近起こった様々な出来事が薄い本に集約されている。
ナスカの地上絵は表向きで、実際には超高圧縮された情報体として見るのが適当のようだ。
これを見ると最近氷妖精が起こしたという小競り合いの話や、茨木華扇の話までもが
収録されていた。これには驚くばかりだ。


何故こんな手の込んだことをするのか尋ねると、このような答えが返ってきた。
これら情報は能動的に行動しないと手に入らないようにする必要があること。
さらに、インターネットなどで放流すると何時かは暗号解読される恐れがあることだそうである。
なるほどそれなら会社のコピー機を使うのもいたしかたないと思う。


延々とベルトコンベアの如く作業。 だんだん感覚が麻痺してきて指も痛くなってくる。
ハンバーガーを出されたが、指に油がつくといけないというので切ったものを箸で食べるという
シュールな光景が印象的であった。


せめてナスカの地上絵はなんとかしましょうよと尋ねたら、普通の人が買ってしまったら意味がないと
言われてしまった。 自覚があると言うことなのだろうか。