□月 ●日  No1614 義賊


命蓮寺に物を届けに行ったらムラサ船長が久々に惚けた表情で空を見ているので
一体何が起こったのかと尋ねてみる。
なんでも古い知り合いに会ったというので、そんな人がいるのかと思っていたら
なんとそいつは舟幽霊時代に船を沈めまくった奴だと聞いて思わず戦慄する。


朝倉に連絡を取ったら、コンタクトをとれた地点で無害化しているから問題ないと言われた。
つまるところ、八雲商事や各種機関の特別なコンタクトが無い限り外の世界から幻想郷に
ましてや在野の妖怪にコンタクトを取るのは不可能である。
即ち、その舟妖怪もまた幻想郷入りしたと言うことだろう。 顕界で迷惑を掛ける可能性は
少ないというわけだ。


その妖怪は、どちらかというと義賊的妖怪だそうで海賊行為をしたり、悪いことをやっている奴を
懲らしめるために船を沈めているというちょっと変わった奴なのだという。
ムラサ船長が大師様に救われる前も、どうにかして船を沈めさせるをやめさせようと試みたとか。


それは恋なのではと思ったが今となってはどうでも良い話だ。
だが、その妖怪が廃業だと言ったのがとても気に掛かるのだという。
現在の海賊はハイパーインテリジェンス集団と化して船を沈めるのは容易い物ではなくなったらしいのだ。


ここで近年の海賊について朝倉達が収集した話によれば、政情不安定な国において船体設備の高度化に
伴い電子機器などを制御する学力レベルの高い人材がお金になると言うことで海賊化しているという。
彼らは強力に組織化されており、舟妖怪の力で多少のトラブルを起こしても船のトラブルと片付けられ
撃沈に至らないらしい。 
それどころか彼らは的確に舟妖怪に対する対処も行ってきており、近年では撃退されるケースも
しばしばだったらしい。


ついには、舟妖怪が警察に海賊行為を通報するに至り、その警察までも海賊行為に荷担していたなどという
場面を目撃するに至り、廃業とあいなったというのである。
ムラサ船長曰く、人間の業は恐ろしい物ですよね という。 まったくだと思う。


その妖怪は幻想郷で余生を過ごした後、存在意義を失って消滅することになったそうだが
この話がどうもテレビ関係者に伝わったそうで私が戻ってきたときその妖怪を顕界に連れ戻し
ヒーローに仕立て上げると言われて唖然とした。
ムラサ船長の言うとおり世も末かも知れない。