□月 ●日  No1720 好きで中有の道にいないよ


八雲商事社員には疑似スペルカードというものが配られている。
これは、妖怪に対して最低限の自衛をするために用意されているものだが
一般の妖怪が使うカード型ではなく、注文などで利用するPDAにインストールされたアプリケーションである。


というわけで疑似スペルカードについて説明する。疑似と言われるのは結局モニターにカードの絵柄が表示されて
ちょっとした弾幕を放って終わりだからである。スペルカードに込められている情報量ははるかに少ない。


ここでおもしろいのは発動させる方法である。
実のところスペルカードの発動方法というのは各種様々だが、月人が使っている発音困難な言葉で
発動させるのが主なやり方だ。本来ならいろいろな意味があるのだが、だいたいは見よう見まねで使っていたり
当て字を入れてそれっぽい発音にする。空耳みたいなものだ。
これはスペルカードエンジンが月由来の技術であることに起因する。薬屋の名前が発音困難であることと
基本変わらない。


考えても見ると、真言と呼ばれるお経はほぼ当て字みたいなものだから、なるほど
この考え方は至極合理的と言える。


しかし八雲商事社員はそのやりかたは伝えられない。悪用対策にトリガーとなる呪文は
なんとPDA内部に録音されており、プログラム実行とともにPDAから声が発せられて
スペルカードが実行される。
これらの声は妖精たちにはよく通る声として聞こえる。 ゆえに妖精たちもスペルカードが利用できるが
人間たちには悪用困難になっているわけだ。


なお、幻想郷の人妖が怪しい発音で、スペルカードの宣言をするのは発動コードが
混じっているからと思って良いようだ。

誤爆をふせぐためのものらしい。


なので基本八雲商事社員はとっさにスペルカードを利用できない。
アプリの実行に数秒かかることもあり、基本的には身を隠してからまたは逃げながらの利用になるのである。


そのまえに中有の道にこんにちわするハメになるのだが。