□月 ●日  No1836 それが偉大な化け狸


幻想郷の外の世界すなわち顕界にも妖怪は数多く住んでいる。
彼らは人間の生活に慣れ親しみ、人間の生活に溶け込んで行動している。
外の世界の道具を自在に操り、その行動原理はほとんど人間と変わらない。


人間は自然を破壊していると人間が言う。一見するとまっとうなことを言っているように見える。
しかし、彼ら妖怪からすればちゃんちゃらおかしな発言だという。
妖怪の一人はいう、その山は本当に自然の山なのかと。幼少の時に見た景色を自然のものとして
美化しているに過ぎないのではないのかと。


人間が開発をするのに抵抗する妖怪が居るという。それこそ妖怪をバカにした物言いだと
言われたことがある。本当に抵抗したいのは人間なのではないか。
確かに開発によって、追い出されたり辛い目に遭う生き物や妖怪変化がいるかもしれない。
しかし、開発によって救われた命もある。
人間は認めたがらないだろう。自分が自然を破壊していると考えて居ることがすでに
自己陶酔の一部であるということを。


妖怪達は理解している。この星がちょっと寝返りを打っただけで無数の生き物が死に
至らしめられることを。生き物は人間が思っているよりも遙かに多く、理不尽な死を
強要されてきたのである。


妖怪達はそんな人間達の本性をよく理解している。だから彼らは人間の行動に
抵抗なんてしない。抵抗するのは幻想郷に行くような愚かな妖怪ばかりだ。
自らが慢心している事実に気づかないその態度にちょっと手を加えれば
奴らは金を落としてくれるのだ。


化け狸はそうやって今の世の中を生きてきたという。
自らの信仰の対象にして生き残りを狙った狐とは対照的に、
彼らはあくまでリアルの中で生きている。
それがすなわち化狸なのである。