□月 ●日  No1856 ああ、面倒だ


この幻想郷にとって死というものの概念は色々難しいことになっている。
本来人は死んだら全てがリセットされて無となることが普通なのだろうが
ココにいる場合死んでいるのか生きているのか分からなくなることが度々発生する。
たぶん顕界で同じような展開に遭えば私はとっくに鬼籍に入っている。


ここに死を嫌っている王様がいる。
正直言うと、不老不死の術なんてものは今すぐキャンセルすべきだと思う。
現代のテクノロジと、月面のテクノロジがあればたぶんある程度の長命は確保できるの
だろうが不老不死は駄目だ。


厳密には不老不死じゃないから大丈夫と言うのは綿月依姫である。
仙人になる過程の中でたいていの場合は自然と同化すなわち消滅するのが関の山と
いうのが基本らしい。通常精神を集中し、周辺と同化するような気配の消去などは
その肉体があってはじめて成り立つものだ。
そうしないと自分の体が容易に霧散霧消してしまう。


だから、大体の場合はかりそめの体を用意してそれを利用する戦術が執られるのだが
たぶんあの聖徳王とやらはそこまで頭が回ってない気がする。
いや、そこに至るまでのノウハウがないというべきか。


面倒だから「蓬莱の薬」でも渡してしまった方がいいんじゃないかと
綿月依姫に尋ねたら「阿呆」と返された。
ちなみに「蓬莱の薬」の服用者というのはあのメトセラ娘以外にも居るとのことで
そいつは見事に廃人化したという。まあ、「蓬莱の薬」が穢れているって判定されるには
その薬をだれか服用しなければ分からないのは確かではある。


個人的には「蓬莱の薬」を飲ませたいような人が色々いるのだが、
それはやめたほうがいいだろう。どう考えても服用した人は不幸になる。
過ぎたるは及ばざるが如しなのだ。