□月 ●日  No1957 帰還者


幻想郷にいながら幻想郷にとどまれない人間がいる。
これは幻想郷という土地に疑問を抱いてしまうという人種のことだ。
こうした人種は下手をすれば幻想の世界を破壊しかねないのでさっさと顕界によこしてしまう。
所謂幻想入りの逆の現象である。


問題となるのは八雲商事と関わる人間達だ。
彼らだって馬鹿ではないから、幻想郷の外には何かがあってそれらが
何かしら物を持ってくると言う認識がある。
特に学問の類は、幻想郷の教育水準を遙かに超えた代物であり
それらの知識を得たいという若い人間は確実にいる。


そうした人間が顕界に行くとまず十中八九帰ってこない。
基本的に返さないともいう。彼らが幻想郷を破壊する可能性があるからだ。
ちなみに外の世界を知っている妖怪なら話は別だし、
外の世界の住民が幻想郷にやってくるのなら話は別だ。


そのシステムを利用して幻想郷に再びやってきた人間が出たのでここで取り上げておく。
その人物はもう年老いていたのだが、国籍ロンダリングなどを繰り返し過去を塗り替えていた。
死ぬ前に生まれ故郷に戻ろうとしたのかは分からないが、発覚したときは
そのまま返すかどうか検討して結局、そのまま放置することにした。


何故放置したのか。
顕界になれた人間が元の幻想郷の生活に戻るのは極めて困難だったからだ。
食料も水もここで何もかも手に入れるにはそれなりの知恵と勘がいる。
それは幻想郷に住んでいるかそこについて学んだ人だけに許されたものだ。
もちろんその人物も過去の記憶から最初は物を手に入れていたが、いかんせん身体が
ついていかなかったのだろう。


あとで遺品の処理で手間取ったわけだが、多分何とかなるだろう。
こういう例は一度や二度じゃないのだから。