□月 ●日  No2256 八雲商事


幻想郷に物資を送っている企業八雲商事。この八雲商事にはある大きな矛盾が存在する。
たしかに八雲商事は幻想郷で自給困難な物質を貿易するという使命を持つが
実はこのやり方は現地の経済的自立を妨げるという矛盾を孕むことになる。
たとえば我々が塩を安く提供すれば、幻想郷で本来必要なはずの製塩産業をつぶすことが可能だ。
つまるところ、我々がやっていることは幻想郷で本来芽吹くべき産業のいくつかを
潰す行為であるということができるのである。


この話は新入社員がやってくるたびに繰り返される議論だ。
頭が良い岡崎や北白河も同様の質問をボスにぶつけている。そしてボスは同じような答えを出す。
「そもそもそれが目的である」と。


八雲商事という概念は博麗大結界の一部品である。博麗大結界に送られるものを一人で
選別することは不可能なためたくさんのスタッフを用いてシステマイズすることが必要となる。
ここで重要なことは少数精鋭の否定である。少数精鋭というのはとても脆弱な仕組みだ。
少数精鋭のだれかが崩れれば途端に全体が崩れてしまう。
ゆえに八雲商事の武器は組織である。組織であり、知識の伝達が行わればシステムは決して
破損することはない。


その仕組みをもって幻想郷の一産業をつぶすことはすなわち、彼らが外の世界に依存するように
仕向けることを意味する。確かに妖怪たちは博麗大結界の中に押し込んでいるが、彼らの存在は
マグマだまりのように溜まることになる。エネルギーが溜まらないように仕向け、エネルギーが
外の世界へといかないようにすることが八雲商事の使命である。


つまり八雲商事が外の世界からお金を得ることができるのはひとえにそれがあるからである。
小さくまとめることが重要であるが外界を知らなければ問題はないというところなのだろう。
それを残酷というかどうかは別問題である。