□月 ●日  No2374 適応


 八雲商事では入社する前に本人の身辺調査を行うことが常になっている。
たとえば、借金をしているとか酒乱だったとかといったリスクが存在する場合は
さすがに八雲商事に入れるわけにはいかないと言った具合だ。
 

 厄介なのは霊媒体質とかの類でこれも幻想郷に行くにはかなりリスクがあるとされている。
そういうのに限って幻想郷に興味があるのだが、こういう層は幻想郷に行くのは困難だ。
多くの場合が染まるとか、酷いケースだと中身が入れ替わるなんてことが起こりうるらしい。
もといた奴はどこへ消えたのかって話になると、さすがに中有の道でどうこうなんて
できないのである。
 

 八雲商事に入社する条件としてマーカーに対応できる人間という制約があるのだが
説明を聞くとよくわからないのだが最近になって意味が解って色々戦慄している。
要するに、私が死んでも中有の道で追跡できるような体制がマーカーなのだそうだ。
精神になれば、人間は最初のうちは自分の姿を維持することができるが、
やがて維持しない方が便利だとわかるとどんどん自分の実態を解体していく
そりゃそうだ。そのほうが全能感を得られるのならそっちの方がいいに
決まっている。


 しかし、それをやれば確実に自己が崩壊するので、それができないようにする
予防策というものがいる。それがマーカーというやつだ。崩壊前に回収してしまえという
発想だ。もっとも我々になれば崩壊しないためのコツも学ばされるのだがそれはそれ。


 このように幻想郷に行くときというのは十分な準備を伴って行くものである。
ちなみに、このルール、出来たのはごく最近の話だ。例の妖怪桜の異変からなのだ。
つまりその前に入社した人間はというと。 見ての通りです。