□月 ●日  No3035 危険人物


 八方塞がりで長期戦覚悟となった本案件。事務所に勝手に構築された結界を調整しつつ
 資料の整理を行っているところに事件発生。

 
 買い物に行っている雷子を退治しようとする者がいるらしい。
 一体なぜ彼女を狙うのかわからないが、彼女の持つ携帯電話のGPSから現場に急行。
 幸いそれほど離れていないので程なくして到着。
 声を掛けるもその外見を見て危険度を察知する。普通ならこんなやつを相手にするなら
 逃げの一手だ。


 一体どこから彼女のことが知られたのかそれとも私に依頼する前に何かしでかしたのかは
 わからない。しかし相手は完全に危険な人物だ。08の「魂魄」と言えば、前職でも
 その容赦の無さで有名だった。彼は妖怪を退治するというより抹殺するのが得意な
 荒事専門の人妖である。


 元々は人間だったらしいが今は完全に人間をやめている。
 しかも彼は分身を使う。銃撃もまともに効かない。いいところ一瞬だけ時間を稼ぐのみだ。
 しかもほとんど意味が無い。
 相手はこちらを一瞥すると、背中に強烈な悪寒が走る。


 分身の一つが急速移動してこちらに向かってきたのだろう。だが、こちらにも切り札はある。
 動きを止めようと足を薙ごうとしたのはわかる。私にできるのは瞬時のホバリング
 体を捻り、懐から取り出したカードを発動する。ほぼゼロ距離で暴発の危険があるが
 そんなことを言っていられない。相手の姿が雲散するや、雷子までの距離を詰める。
 久々に行ったホバリング移動で、スピードの制御が効かない、だが逃げるにはこれが一番だ。


 一瞬のチャンスを逃さず、雷子の手を取ってもう一枚、こちらはもう一つの切り札を使用する。
 効果時間は短いが一瞬動きを止めるだけの効果なら十分ある。

 
 とりあえず彼女から理由を聞かないといけない。
 その前に可能な限り手を回すか。
 もっとその前に、制動に失敗して生ごみの中に突っ込んだ体の臭い取りのほうが先か
 ネットが無かったら危なかった。