□月 ●日  No3034 走査


 今にして思えば、雷子を留守番させておけば良かったのだが時既に遅し。
 芸能人たちが屯するパーティ会場に入り込み、雷子の持ち主とやらを探しまくるのである。

 
 ここまで一応ネット検索などを駆使して持ち主のことを調べてみたのだが
 まともな情報を得ることは出来なかった。これは即ちネットに登場していないほど過去の人物か
 もしくは外には出ないで早々に夢を諦めたかのどちらかだろう。


 だが、もうひとつの可能性もある。名前を変えて再出発するパターンだ。
 この場所はそういう人間がごまんといる。
 ステージを見ると耳に障る声で歌う地下アイドルが殆ど客がいない中を笑いながら踊っている。
 このような場面はいくらでも見るのがこのパーティの特徴だ。


 いる人物は自分を売り込むのに必死な者ばかり。それは私とて同じだ。
 似合わぬ愛想笑いをしながら方方に名刺を渡すのだが、今回は色々勝手が違った。
 一応雷子については依頼人とはいえず助手と紹介したのだが、雷子の手を握って
 自分のことをどうか頼みますと言われたり、とうとう女の影がおいおいってやられたり
 酷いとしか言い様がない有り様だ。


 雷子はというと助平な親父どもから名刺を渡され、お酒を散々飲まされているのだが
 前後不覚になることはない模様。一度お酒を飲んだらこいつは最高に飲んで
 金かかって仕方ないので、パーティでお酒を飲むのは一部解禁していたら
 この有り様である。


 それにしてもなかなか情報が集まらない。ネットでも集まらないとなると。
 どうしたものだろうか。