○月■日 月は無慈悲な花の女王

今日は、朝から気になっていたものがある。
だから、定時。チーフに仕事を全部託す。
チーフ、ガン見。チーフ、マヂっすか?
私は、マヂ。頼んだ、チーフ。
多分、仕事丸投げ。
こういう時くらい、日頃の私を感謝しろ。


私のマンションに着く。
途中、スーパーに寄って、ツマミの調達。焼き魚を見つけた。よしよし。
月があがりはじまっていた。
マンションのエレベーターにヤキモキさせられる。
少し、イライラ。
玄関。ダッシュ鍵あけ。荷物、ぶん投げ。焼き魚、ごめん。


ベランダ。
良かった。本当に良かった。 花が咲きはじまっていた。
私がまだ人である時にもらった花。
私の事をいちばん良くわかってくれていたあの人がプレゼントしてくれた、花。


年に一度、たった一日だけ花を咲かせる。金盛丸。
あの人は、マグロ漁船みたいな名前だと笑っていた。
私の忘れっぽい性格をわかっていて、手間があまりかからないサボテンの花をプレゼントしてくれた。
今は、サボテンとの生活。今年も一輪の真っ白い花を咲かせている。
これは、あの人との想い出。今年もまた白い花と出会えいる。


安心したので、焼き魚をチン。酒棚から、越乃寒梅の焼酎。とっておき。
金盛丸の原種は、月下美人という。品種改良を重ねて作られた、花。
ベランダで、金盛丸と酒を呑む。月は、綺麗な満月。
月の光に照らされた金盛丸もまた、想い出のように白く美しい花だった。



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解説編が笑えたので追加