○月 ○日 No 093 丸縁眼鏡に気をつけろ


朝倉は妖怪のくせに目が悪い。ずっと伊達眼鏡だと思っていたがある術の代償として選んだ道だという。
ポーカーゲームのとき、ずれ落ちた眼鏡を何度も元に戻している。 
周りからイカサマのサインじゃないかと言われた朝倉は無表情のままこんな話をしだした。


ある妖怪桜を封印するとき、贄は当人の希望で即座に決まったが術者がいなかった。
境界を操ることができる強力な妖怪でさえ、自分の能力ではどうしようもないと匙を投げた。
朝倉は当時から研究対象としていた月の技術でどうにか妖怪桜を封印できないかと思案した。
そんな時、匙をなげたあの妖怪からある人物を紹介された。 銀髪で長髪のその女性は朝倉に
「桜をどうにかする方法なら私が知っている。私が知恵をやる。お前は力を提供しろ。」と言った。
その方法は芸術的な式によって組まれた一種の魔術だった。 自分の知る妖怪の力とも科学の力とも違う。
だが、それは境界を操る妖怪の大切な友人を抹殺することに繋がることは明らかだった。
すでに贄となる友人は周囲に死をもたらす危険な存在となっていた。彼女が自害すればすべての問題は解決するが
存在を消滅させてはいけない。 そう朝倉は考えた。
紹介された銀髪の彼女に相談して、どうにか魂を残す方法編み出した。
それは自分の目を代償にすることだった。
術は実行に移され、封印は完了した。 その桜は今冥界にある。


面白い話だったが、どうやらそれは朝倉のブラフであったらしい。
その時のゲームはお流れになったが、朝倉にかなりもってかれてしまった。
ただ、あまりに面白い話だったので日記に残してみた。
ポーカーの後ちょっとだけ朝倉がちょっとだけ淋しそうな表情をしたのが印象的だったからだ。