□月 ●日  No1950 疑惑


命蓮寺の連中と新年の挨拶兼七草粥をたかりにいった。
相変わらず礼儀正しく、妖怪の中では圧倒的無害な存在である。
妖怪とて自分の存在意義を破壊されなければ宗教すら受け入れる
ことの証左であるともいえる。

朝倉に言わせれば皆大師様を誤解しているという。
皆が思う以上にエゴイストであり、自分の能力や立場を守るために妖怪達を匿っている。
だが、彼女だけの力で果たして若さを維持したり、多大な能力を得ることは可能だったのだろうか。
彼女が若い姿に戻ろうと考えたのはもう老婆の時である。
研究をしたり若さを得る術を使うには体力も時間も足りないのだ。


もう一つ書いておかないといけない。
大師様の弟には数多くの弟子がいたし、それなりに大きな勢力を持っていた。
そして霊能局へと至る礎になったといえる。
彼女に法術を学ばせるには、人脈とりわけ組織力
それは人が一人行方不明になっても隠蔽できるほどの代物だ。


彼女が若さを手に入れたとき、弟の弟子達は別の宗派へと分かれた。
その後なのである。彼女が封印されたのは。
その頃、最初の月面戦争の失敗による掃討作戦があったそうだが。


何が言いたいかって?
大師様は封印されるだけの動機をしっかりもっていたのだということなのだ。
これでは足りないか。
もっと正確に言えば彼女は自分の弟の一派に嵌められたともいえる。若さと引き替えに。
いや、お互い同意の上でか。


一つ言えるのは、命蓮寺の連中の言い分を鵜呑みにしないことだ。
それくらいの危機意識は常にもっていないの連中の思うつぼというわけである。