□月 ●日  No1570 できれば契約を


朝倉がここ数日かつてないレベルで機嫌がいい。
彼氏でも出来たのか、はたまた何か良いことでもあったのかは分からないが
あまりに機嫌が良すぎるので北白河から寧ろ気持ち悪いという感想が出たので
それとなく聞いてみた。


なんとここ数日朝倉の家に下着泥棒が入っているというのである。
下着だけではなくサンダルなども被害に遭っているそうで、あの臭いそうな
サンダルをどうして盗むのか本気で理解に苦しむ。


もしかして幻想入りしたのか隙間妖怪にコスプレした拍子にどこかに行ってしまったのか
とか色々考えたが本人に聞くと折角の機嫌を損ねてしまうと思い、大変ですねと言って
ここは流すことにした。


と、言ってもやっぱり下着泥棒なだけに本人は不気味半分まんざらではない半分で
あることは確かである。一応警察に被害届は出しているようだが、彼女が本気を出せば
すぐに犯人は捕まるのは見えているので、心の奥底で捕まって欲しくないと思っているのは
他でもない朝倉自身である。


そこに魂魄が、下着を盗んでいる犯人を捜し出そうと言い出した。
下着程度で済んでいれば朝倉の機嫌は良い。ただ他の物を盗まれると機嫌が悪くなる。
だから泥棒に盗むのは下着だけにして下さいと言おうということになったのだ。
絶対基本的理念がおかしい。


しかし我々が直接出向いて泥棒に有り難うございましたなんてやったら、こちらが
共犯ってことになりかねない。 どうにかならないかと考えた結果
多々良小傘にこの問題解決を依頼することにした。 
彼女の持つ妖怪傘なら下着盗難現場を捕捉できる上、彼女が期待するびっくりさせるという
目的も達成可能である。 
妖怪傘のスペアを借りていざ作戦開始。


多々良小傘の妖怪傘だが、ネット転載天狗の携帯電話と接続してその内容を録画できる
ようで、画像分析。盗んでいる人の姿を捉えることができた。
中肉中背のおっさんだった。まあ色々な趣味があるだろうから結構なのだが
一度お礼を言わないといけないと魂魄が言うので、妖怪傘と魂魄の半霊をセットにして
お礼を言わせて貰った。 ついでに来年のカレンダーと菓子折もセットでお渡しし
これからも下着泥棒宜しくお願いしますと重ね重ねお礼した。


こういう人材はとても貴重であるので、ついでに朝倉さん独身なので貰って下さいと
言ったらその男は逃げ出してしまった。そこで有ることに気づいた。
男だと思っていたそのシルエットは女だった。
さっきは携帯電話の視野の狭さから男だと思っていたがよく見ればそれは女の
それだったのだ。


何故同性がそんなことをするのか?謎は深まるばかりだが、
妖怪傘を回収した小傘が一言。あれは人間じゃなくて妖怪で
魔力にまつわるものを盗んでいたのではと言っていたのでとりあえず皆で
一様に納得した。


何故、下着に魔力をこめていたのかということは小傘が深く聞かない方が良いと
言うのでこの件は封印することに決定した。