○月 ◇日 No 104 妖怪の能力は人智を超える


逃走する妖怪を追跡する。車で追跡しようとしたが相手のほうが素早く撒かれそうになる。
そこに自動車に併走する黒い影。 なんと冴月だった。 時速100キロで走る車を悠然と追い抜いていく。
その後ろを、さらに見知らぬ人影が通る。 玄爺の操る傀儡であった。 ここまで来ると人智を超えている。
二人に「ついてきているか?」と言われたが無理な相談だ。 


追われた妖怪は先で一般車両を奪っている。 流石の妖怪も体力的には限界があるのだろうか。
我々との距離が一気に差が縮まる。
車が視界に映った次の瞬間、二人は大きく跳躍して自動車の上に飛び乗ってしまった。
玄爺の傀儡が、まるで薄皮を剥がすように自動車の屋根を引き裂いてしまった。
不意に車が蛇行して傀儡が投げ出されたが、冴月はボンネットの上で銃を構えると
そのままゼロ距離射撃を始めた。 車は程なくして近くのガードレールに激突
そのまま炎上してしまった。


冴月の妖怪であることを隠しすらしないやり方はあまりに強引過ぎて、
このままでいいのだろうかと疑問を感じずにはいられない。
だが、彼女ほど隙間妖怪から圧倒的信頼を勝ち得ている人物もいないだろう。
もしかすると博麗の巫女やボスよりも信頼されていると思うときもある。
彼女は隙間妖怪の分身とも言える送還銃と呼ばれる銃を所持している。 
妖怪を強制的に幻想郷に転送できるこの銃の外見はいわゆるライフル銃にも似ているが
突撃銃としても使用できるようで、幻想郷の武器がいかに常識はずれであるか思い知るものだ。


彼女の正体は謎が多い。 そもそも冴月という名前すら実名なのかも怪しい。
ただ、わかっているのは幻想郷の立ち上げに大きな貢献をした妖怪の一人であるということだけである。