■月 ○日  No438 鴉天狗の強さの秘密


幻想郷内で始末が悪い妖怪の筆頭にあげられるのは鴉天狗だろう。
何を言われるかわかったものじゃないし、おまけに腕っ節も強い。
普通の妖怪なら一週間程度の訓練が必要なスペルカードも
朝倉によるチューニングがあったとはいえ、一日程度で使いこなしてみせるなど
その実力はかなりのものだ。
今日行われた玄爺による社内研修はそうした鴉天狗の強さの秘密である。
これは解剖学の観点から見れば容易にその理由がわかるらしい。


幻想郷でもっとも力を持つ存在と言ったら龍であろう。
龍は荒ぶる父である地球の大変動を代弁する存在であると言われる。
ある時は大陸を引き裂き、そしてある時は気候をも変え八百万のカミをも
巻き込んで生命の運命を左右する。
この龍と鴉天狗に共通する臓器が「気嚢」である。 気嚢を備えた生き物は
空気が薄いところでも酸素を十分活用できる。


天狗が超高速移動をするときも気嚢が大きな力を発揮する。
夜雀が息継ぎもなしに延々と歌うことができるのも気嚢のお陰だ。
そして龍と同じ器官をもつことは謂われが大切な幻想郷の生き物では
重要な意味を持つらしい。


鴉天狗は呼吸のために肩を上下したりする必要はない。
だからシャッターチャンスを逃さないためには便利らしい。
この能力は狙撃をするときにもとても有効なスキルだという。


うちの会社にも鴉天狗を引き抜いたらどうだろうかと聞いたら
冴月が天狗ではないが鴉の一種であるという。 天狗ではない鴉とは一体何だろうか。


そんな冴月は今日もご機嫌斜めである。 例の神社が来て以来最近の冴月は
少しカリカリしていると思う。
「あのクソ蛙が」と言って毒づいている冴月を見て、
一応妖怪に生理があるのかと朝倉に聞いたら真っ赤なハイヒールで殴られた。