○月 ★日  No271 幻想郷の建築物


幻想郷の建築物は一般的に木造である。 
その構造は現代の木造建築と大きく異なる。
まず幻想郷の建物には筋交が殆ど使われない。 
筋交とは柱と柱の間に斜線上に付ける柱のことだ。
結界の外の木造建築では、筋交に加え端部に金物でさらに補強を加えている。


筋交がなければ、地震のとき建物は容易に倒壊する。
それでも建築方法を変えないのは、幻想郷の建物が「壊れたらまた建てればいい」という観点で
作られているからだ。 結界の外でも昔はそういう考え方で建物が建てられていたのである。
人口の少ない幻想郷では、もしあまりにも頑丈な建物を建てるとたちまち棟梁たちの仕事が
なくなってしまうという事情もある。
また、幻想郷では大火災が意外と少ない。 
火災が発生すると巡回している魔女や妖怪がたちまち雨を降らせるからだ。
破壊消防による再建築需要もあまり見込めないため、建物は壊れやすく作られてしまうのである。


上白沢は「それはおかしい」と言っている。 
聞くと塾がしばしば雨漏りになって教材が水浸しになるそうだ。
都度修理はしているのだがやはり修理がいらない建物がほしいと言う。
実際のところ外の世界でも修理がいらない家なんてない。 無理に建物の寿命が増えて
水気を失った柱が脆くなる現象もある。 そのなると耐久性は幻想郷の建物とあまり変わらない。
この事実には上白沢もびっくりしていた。 
結界の外の世界も案外たいしたことがないと嫌味を言われたが仕方ない
人間の力なんてものはまだまだ自然現象とやりあうにはあまりにか弱いのである。