○月 ×日  No309 異変の兆候


過去の歴史を紐解いていくと、侵略を受けた国は例え相手を退いたとしても
国家の崩壊は免れないらしい。 
具体的な例を挙げれば鎌倉幕府がそうで元寇の後の幕府が
システム崩壊を起こし室町幕府へと政権交代したといわれる。
侵略を受けた国は勝利しても、結局何も得るものはないのだから極端な話
やられ損である。
多くの国はよくて政情不安、悪くて内戦状態でグダグダが大方のパターンだ。


このような内戦状態の国家に対して隣国がやることはとても単純
他人事を決め込むことだ。 
相手に直接干渉せず、隣国から人間が逃げても速攻強制送還することが重要となる。
これは旧中国の共産党政権から学んだ教訓だ。
共産党曰く、潰れる国は黙っていても勝手に潰れるものだというのである。
そんなわけで、うちの会社は基本的に月の情勢がどうなろうと、通常営業を決め込んでいる。


ボスがいつになく機嫌が悪く、報告へ行く足取りも重い。
すると朝倉が「私が代わりに報告するから」と言ってくれたので随分と気が楽になった。
私の報告を一通り聞いた後、朝倉がぽつりとこんなことを話した。
「古来幻想郷はすべてのものを受け入れ続けてきた。 しかしここに至って急に排他的になった。
 何かがおかしい。 システムのバグなのかゆとりが足りない。」
新しく走り出した結界の話なのか、それとも今の情勢がおかしいというのかはわからない。
ただ、朝倉がボスの言葉を代弁していることはよくわかった。