□月 ●日  No2244 妖怪と法


 幻想郷が結界を形成するに至った理由というのはいくつもあるのだが、多くの場合は複合原因であることは
ほぼ間違いないことでありまして、契機というのは事件というよりは可能であることの目途が立ったことを言うようです。
 こと幻想郷に妖怪が集まるようになった理由を考えますと、近代における法のあり方が一つの契機になっていることは
間違いないようです。

 
 これまで人間同士のトラブルを解決する方法というのは慣例によるものでした。
これは現代においても大体変わっていないことなのですが一つだけ、大きく変わったことがあります。
それは妖怪たちにとって有利なルールがことごとく削除されたということです。これはある意味仕方のないことです。
特定のルールを残せば特定の妖怪たちを優遇することになり、結果的に優遇されなかった妖怪の反感を買う、
危害を加えられるという思想があるからであります。
 慣例法を集約するということは平均化するという意味でありますから、当然地域片っ端から慣例法が調べられる
結果となります。


その結果ある不合理が浮かび上がってきます。この不合理の中にいるのが妖怪たちというわけです。
こういった慣例法が平均化されますととたんに妖怪たちの住処が奪われていきます。近代国家になるためには法の整備は
不可欠ですから移住先を設けることは当時の政府にとっても利害が一致していたと言えるでしょう。
 もちろん、妖怪たちが抵抗したのかというと実はそうではないこともわかっています。
 むしろ妖怪たちは嬉々として移住に応じたという話もあります。彼らの事情を聴いたことがある人に尋ねたのですが、
欧米列強による文化侵略を受ける前に防衛しようという機運が妖怪たちにもあったということです。植民地化されれば
妖怪もへったくれもなく文化そのものが破壊されることは隣国の情勢を持ってきた妖怪たちから伝わっていたことだと
言います。 文化が破壊されれば、妖怪たちはその存在ベースを失うことになります。


 やがて国は戦争へと突き進み、最終的には空爆に至りますが、重要な歴史的建造物は被災せずに済みました。
 これは妖怪の政治的勝利と言える出来事だと言えます。彼らは政治力で戦争の次代を生き抜いたと言えるのです。
 法と妖怪たちの動きはまだまだ研究すれば面白い答えが待っているのかもしれません。