■月 ○日  No403 輸送列車の内部に眠るモノ


会社で伝票整理をしていたら、岡崎が列車で話があると言ってきた。
もしかしてもしかするのかと一瞬だけ期待したが、行った先に北白河がいたので
少しだけがっかりした。


岡崎は幻想郷行きの列車に改良を加え続けているのだが、最近奇妙な注文が
入ってきたらしい。気密性の向上と宇宙放射線対策をするように言われたそうだ。
無茶な注文だと思いつつも、列車を解体して精査したら中から古い八卦炉が
見つかった上、気密性も少しの改造で十分実用に耐えることが判明した。
どうやら本気で月の人間相手に商売をする気らしい。
月面名物、お月見まんじゅうとか売り出すのではないかと勝手に予想したら
「喜ぶのは、白玉楼のお嬢様だけ」と北白河に突っ込みを入れられた。


ここから岡崎の岡崎たる所以である。 岡崎は大学の伝手をつかい
列車の外装に隠された物体の年代を機材を借りて調べてみた。
するとこの列車は1000年以上前に作られた物らしいという
不思議な結論が出てしまった。何度やっても計測内容は変わらなかった。


博麗大結界が初めて生成されたのはおよそ1000年前、この列車の車体は
それよりも古い物となる。そして、それらを作ることができる者は限られている。
そしてうちの会社が何故こんなものを手に入れたのかも気になるところだ。
だがそれよりも大きな疑問は何故岡崎が私に話を振ったのかということだろう。


それとなく聞いたら、「自分の乗っている列車が巨大な棺桶だったら困るでしょ」と
言われた。 どうやら岡崎はこの列車の信頼性や技術力の高さを自慢したいだけ
だったようだ。 朝倉にもすでに話して喜んでもらえたという。
その後マシンガンのように列車の性能とやらを長々と聞かされた。
北白河が苦笑いしながら、ごめんねのポーズをとっていた。
要するに北白河が興奮した岡崎を押さえつけられずに助けを呼んだというのが真相
みたいである。 話が終わったのは一時間後 もう泣きたくなってきた。


席に戻る途中、死んだ目になった朝倉を発見して苦笑した。