■月 ○日  No411 計画性ゼロ


ひさびさに永遠亭に納品に行ったら、中でニート姫と詐欺師兎がなにやら慟哭している。
聞けば満月がそろそろ近いという。 後ろに積まれたのはプリントの山
それは上白沢の塾で配られている夏休みの宿題であった。
妖怪兎どもが勉強をしている風景を想像したくはないのだが
今の兎は教養が必要だとブレザー兎から聞いたことがある。


もう新学期が始まって結構な期間が経つ、だが上白沢の性格上
終わるまで許さない方針のはずだ。
後ろに積まれたのは白紙の絵日記だった。これからまとめて書くらしい。
詐欺師兎は私が持っているメモを貸してくれとせがんだ。


私のスケジュールメモには日付の他に月齢と天気が明記されている。
妖怪の行動は特に月齢に支配されている者が多い。
妖怪たちの生活リズムを基準とした「妖怪太陰暦」が存在しているのも
そのためだ。 一方で人間たちは太陽暦を使用している。
本来農作業には太陰暦が便利なのだが、中途半端に明治の政策が
入り込んだためこのようなちぐはぐな事態になっているのだ。


天気もまた妖怪たちの行動を左右する。 幻想郷は山間部のため
天気の変動が激しいのだが、たとえばヴァンパイアの姉妹は雨になると
行動に大きな制限が起こることもあり、天気の記録もきちんと行っておいて
損はないのだ。


自分で何とかしろということで逃亡を試みたが、瞬く間に押し倒され
メモを奪われた。 早く返してほしければ宿題を手伝えとも言われた。
結局宿題を一緒にやってほしいという意味か。
どうにかこうにか日記を書き上げたのは夜も更けてからのことだった。


その後ニート姫と詐欺師兎が上白沢の頭突きを食らって悶絶することになるのだが
兎といいニート姫と言い筆跡というものを考慮していないのはご愛敬である。