■月 ○日  No410 海賊達の運命


幻想郷へ物資を移送するには基本的に二通りのルートがある。
ひとつは輸送列車、もうひとつはタンカー輸送である。
いずれも偽装がしやすく、トラブルも少ないのでとても重宝するらしい。


そんな輸送タンカーが海賊に襲われた。
これは結界の外の話である。 幻想郷の話ではない。
海賊なんて物はとっくに幻想郷行きになっているものと思っていたが
手っ取り早く物資を調達したり、酷いケースだとテロ国家が駆逐艦
使って海賊行為をしている場合もあるのだ。


海賊に襲われたという第一報が舞い込んだとき部署は騒然となると思いきや、
部内は平然としていた。 ボスがたった一言「かまわん、やれ」と言っただけである。
実際のところ、輸送船の中にはたくさんの妖怪も待機しており、駆逐艦一隻で
どうにかなるものでもないらしい。 
水棲の妖怪たちが船底から爆弾を仕掛けたりしたら為す術もない。
熱感知誘導のスティンガーミサイルも妖怪たちには通じない。
結局、数分後に制圧されたのは相手側の方だった。


船は燃料を抜かれた後自沈され拿捕された海賊は妖怪たちの餌になる運命である。
生きて返して情報を掴まされたらたまらないからだ。
証人はすべて消すことは機密保持の基本である。
こうしたとき、真っ先に幻想郷送りにしようと発言するのは人間の方だそうだ。
数分前には殺されそうになっていたのだから、当然かも知れないが
このときの人間の態度にはやはり妖怪たちも複雑な気分になるようだ。


海賊たちはこれからコンテナに詰められて幻想郷で運命の日を待つことになる。
まだ鮫の餌になった方がマシという惨状といえよう。
コンテナに詰められるのは、乗組員の罪悪感を紛らわせるためというのが大きい。
おまけにそういうひとたちを乗せるためのコンテナも存在するのだ。
知りたくないことを知った瞬間とはこのときのことを言うと思う。