■月 ○日  No431 カミとの接続


例の神社に朝倉を連れて入る。 傍らには大量の機材が持ち込まれている。
これらはすべて脳の状態を測定する装置である。
すっかり元気になってお礼がしたいという自称現人神
朝倉が提案したのは、八百万の神様と接続したときの現人神の状況を
科学的に測定して欲しいということだった。


朝倉に言わせると、カミとの接続時、脳内ではまるで幻覚キノコをキメた状態に近づくという。 
この状況だと、脳の「幻想の世界が発現するのを抑える仕組み」が麻痺するのである。


カミと接続するときの初期状態ではカミ障りと言われる状態となる。
いわゆる錯乱状態に近い状態で、科学的には無意識の発現とされているが
この段階で精神のバランスを正常にとれるようになると、カミとの接続が可能な
状態となるという。 つまり自我を守りつつもカミの言葉を言語野で処理できる
ようになるらしい。


まずおねえさんに台本を渡す。
そしておねえさんが発した意志がどのように変換されるのか
プロセスを確かめるというのが今回の企画である。
朝倉が用意した台本である三流エロ小説はシュレッダーの中に投棄しておいた。


実験が始まると自分が用意した台本と違うことに気づいたのか
朝倉がしかめっ面になった。 まさか自称現人神に卑猥な言葉を出させようという
魂胆だろうがそうはいかない。 今回用意したのは名作の古典である。


驚くべきことにカミ様の言葉を自称現人神は正確に表現することができた。
カミの能力を借りて奇跡を起こすためには正確な表現が不可欠である。
だがおねえさんの様子がおかしい。 
結局顔を紅潮させたおねえさんに蹴りを入れられてしまった。
どうやら源氏物語は古典の名作だが腐女子ワールド満載のエロ小説だったらしい。
無知だった私が全部悪かった。 


結局実験はなんとか終わらせたが、朝倉にとっては大成功だったようである。
その後、ふたりにさんざん謝る羽目になったのは言うまでもない。