□月 □日  No640 怪獣大決戦


今日は端午の節句 顕界ではこどもの日と言うことでおもちゃ屋さんに大賑わいになる日である。
一方で幻想郷における端午の節句とは田植えを前にしてのお清めの儀式の意味合いが強い。
そんな謂われがあるのだが、自称現人神のところではお構いなしに変な出し物を考えているようだ。


どうやら男の子が喜びそうなものを見せて、信仰を集めようと考えているらしい。
ここの神社の企画力には正直舌を巻く。 
出し物の内容はヒーローもの。勧善懲悪で男の子が喜びそうなものを目指したらしい。
台本を読んで閉口した。 


そこでは、上白沢の塾に似せたセットに怪人が侵入し、子供人質に暴れると書いてあった。
それを自称現人神の願いでやってきたおねえさんが、怪人をやっつけるとあった。
「ところで怪人役は誰がやるのですか?」 と尋ねたら3人組の笑顔が私に向いた。


必要なものは怪人の着ぐるみと身代わり呪符。 手加減してくれると言うがこのままでは怪我は免れないので
岡崎に相談したら任せなさいと言われた。
怪我を減らしつつも自称現人神の希望を叶えてみせるということだった。
怪人役も自動人形を用いるつもりらしい。 岡崎が協力してくれると言ったわけは
この演劇のクライマックス。 カミ様と巨大怪人との激闘だった。
もちろん巨大になるわけではない。 セットを使って大きく見せるだけのものだ。


そして演劇当日。 はっきり言って演劇じゃなかった。
腕を決められ、天高く飛んだおねえさんのドロップキックで怪人人形は跡形もなく破壊された。
巨大怪人の戦いはどうなるのか、岡崎から預かった輸送用カードを実行してみた。


岡崎が用意したそれは人型ロボットは十メートルもある代物だった。
メモが一緒に貼ってありそこには小型化に失敗したと書いてあったが絶対それは嘘だと思う。
神社のおねえさんに壊されることが分かっているので意地になって大きくしたとしか思えない。
あとで北白河に予算の使い過ぎと小言をいわれはしないか。
いくら相手は神とはいえ、これはいくら何でも無茶だと思ったらそうではなかった。
気がつくとおねえさんも巨大化して、岡崎が作ったロボットよりもさらに巨大になっていた。
かくして大盛況のうちに演劇は終了した。
岡崎が作ったロボは訳の分からないファイナルオンバシラなんとかバスターとかという必殺技で破壊された。
自称現人神は賽銭が増えたと喜んでいたが、私にとっては脱力感だけが残る結果だった。


後で岡崎に一体なぜこんな事をしたのかと詰問したら
大きいことは偉大さを示すのにもっとも単純で有効なアピール方法だと説明していた。
なるほど確かにそうかもしれない。
ちなみにおねえさんが後で子供から「でかねえちゃん」と言われて涙したのは言うまでもない。