□月 ●日  No671 この商魂は見習うべき。 だが


信仰を集めるべく日夜頑張る例の神社。 
外の世界の神社だけにお金を集める手段のバリエーションがとても豊富である。
まずはお守り。 ケロちゃん帽のカミ様によって願掛けされた有り難い代物。
と言いたいところだが、実は横になって芋を食べながら願をかけたので効果はそれなりである。
本気で願をかけると大変なアイテムになるのでそれくらいで十分らしい。


オンバシラキーホルダーやオンバシラ破魔矢は人気の商品。
破魔矢は本当に破壊力があり、妖精程度なら一撃で美鈴女史でも当れば大ダメージを与えることができる代物。
何故ダメージを与えるのかは企業秘密だそうだ。
朝倉にも効くそうなので何か共通点があるのかもしれない。


そんな例の神社で大人気の商品はやっぱり絵馬だろう。
絵馬とは願掛けのために作った一種の掲示板みたいなものである。
何を書いても自由なため、どうしようもない願い事や果ては願い事ですらないものも結構ある。
●●参上とか書いても別におとがめがない。


お姉さん曰く、絵馬のすばらしいところは、願いを叶える義務が無いことだという。
自分のリソースを消耗することなく絵馬だけ量産すればいい。
自由に書けることはすなわちどうでもよい願い事は無視して良いということなのだ。


納品の最中おねえさんと自称現人神が絵馬を回収しているので手を貸すことにする。
顕界では所謂痛絵馬が大問題になっているようだが、幻想郷でも似たようなことが起こっている。
ため息をする自称現人神。 くすくすと微笑むおねえさん。


「おねえさんは 俺の嫁」と書かれていた。


変わらなすぎる。いやむしろ酷すぎる。
上機嫌なおねえさん。願いを叶えるというのを全力で止める。


「褌は飽きた。ブリーフが欲しい」


最初から注文しろ。
おねえさんの手刀で真っ二つに割れたと思ったら
自称現人神起こした鎌鼬であっという間にチップ材になった。
そこまでやることないだろうに。


「白馬の王子様が欲しい」


戦車娘らしい。気持ちは分からなくもないが
そう白馬の王子様がいるようなところじゃないだろう。


人事が万事こんな調子である。
それほど枚数は無いはずなのだが、数時間の作業で丸一日仕事したような気になった。


絵を描いてくる痛絵馬はあるにはあるのだが、私には芸術作品に見えてしまう。
幻想郷と顕界の絵柄は大きく違うためだ。
おねえさんは顔をしかめているが、自称現人神と私は素直に感心している。
それはなんともかわいいおたふく顔の絵だった。



おねえさんが無言でそこに書いてある文字を指し示す。


そこには「早苗」と書いてあった。





あと以下省略。
こっちは逃げるだけで精一杯だった。