□月 ●日  No670 突っ込み専用スペルカードを勉強してみる


とある目的のため井戸妖怪の愚痴に付き合う。
井戸妖怪と言えば幻想郷のライフラインを支える大切な妖怪であるのだが
しばしば事故に巻き込まれた挙げ句みんな彼女のせいになるという何とも不憫な妖怪である。


幻想郷の地下水が安全かと言えば必ずしもそうとは言えないと言うのは河城河童の意見。
妖怪の山を一部くりぬいたプラントではわざわざ地下水ではなく上水を使用しているのが何よりの証拠である。
鉱物類が溶け出していると長寿の妖怪でも内蔵にたまった毒で死にはしないが麻痺症状など
重度の障碍を抱えてしまうことになる。


もっよも河城河童が地下水を嫌う理由は別にある。 地下水と機械がとても相性が悪いのだ。
地下水に多く含まれるカルシウム分は、しばしばセンサーの動きを阻害する。
また、銅管をすぐに浸食してしまう。そのため多くの機械はすぐに壊れる。
カルシウム分で汚れた機械はすぐに直せない。 できても水サンドペーパーで削るのが関の山。
こんなものだから河童達が井戸妖怪の類が苦手になるのも至極当然だったりする。


井戸妖怪も一部妖怪に酷く嫌われていることは承知している。
一番困るのは殺人事件が起きたとき、遺体の隠し場所として井戸を用いることだそうだ。
成仏しない霊魂は井戸妖怪にさんざ愚痴るわ、遺体はボウフラが沸いて臭いし汚いし
迷惑で仕方ないらしい。 
人殺したら妖怪たちに食べてもらえばいいじゃないと言うがたぶんそう言う問題じゃない気がする。


酷いケースだと毒を混ぜる馬鹿も居る。
こういう人はおおかた人間だそうだ。 本人は嫌いな人間を殺すために用いているのだろうが
浄化に酷く時間が掛かってしまう。 顕界では蟻退治の薬が地下にしみ出して
飲めないほどに汚染してしまったケースもある。
みんな美味しく飲んでいたのに酷いというのが彼女の弁だ。


ちなみに今日はヘルメット着用で話を聞いている。
この妖怪と上手に付き合うには頭上に注意すればいいからだ。
おかげでさんざ笑われる。
彼女は悪戯好きでしばしば桶の中に入っては一緒に落下する。
ここで気絶しない程度に命中させるのが職人芸らしい。


桶の他にもいろいろな物を落とすことができる。 悪戯の域を出ないがだからこそ使いやすい。
薄力粉やボール、おたま、そして金だらい。
ボケをかました妖怪に突っ込みを入れるために使う。
この突っ込み専用スペルカードを伝授してもらうのが今回の目的というわけだ。


井戸妖怪によると、きちんとルールを守らないと使えないらしい。
ボケは最後まで聞く。速やかに実行する。 怪我をさせてはいけない。 だそうだ。
あくまでけが人を出さないことに拘るのが彼女らしい。


でも一度だけ失敗したことがあるという。
上手く落下したつもりがそいつが河童だったため、皿の一部を割ってしまったのだそうだ。
なるほど河城河童が井戸を嫌うわけだ。
それ以来狙いが定まらないように帽子を被っているそうだ。
今度河童にあったら謝るように言われた。


カードの使い方は何とか覚えたが、狙いを定めるのが難しそうである。 練習が必要かも知れない。