幻想郷にある妖怪の山。ここで懲戒活動をする白狼天狗達。
彼女たちは年に二回ほど職務放棄する。
そう今年もやってきた予防接種の日。 今回は顕界ではなく幻想郷に割り当てとなった。
小兎姫と連絡を取ったら、顕界の方ではつつがなく仕事が終わったとのこと。
外の世界の妖怪は当然予防接種の意味も分かっているので、たいした混乱が起こらないのである。
一応。
予防接種の日。 白狼天狗を呼びに行くと案の定逃亡済みだった。
幻想郷の妖怪にとって注射は未知の痛みである。 幾ら病気を予防するとはいえ
それらの病気と日常的に接してきた彼女たちにとっては余計なこと。
弾幕被弾の痛みとは違う突き刺す痛みは、彼女たちにとって耐え難いものらしく。
注射のたびにおいおいと泣き出したり、一生懸命逃げようともがいたりと
それはそれはハチャメチャになる。
そんなもんだからいざ予防接種の日になってもやってくる妖怪は定数の約半分。
残りは捕獲とあいなった。
最も私は現地待機。捕獲には弾幕を用いた力尽くであることも少なくないらしい。
体中ぼろぼろになって白狼天狗がやってくると、この期に及んで目に涙をためて注射だけは嫌だと
懇願している。
「なんでもしますから」と言う言葉は色々と邪な心をくすぐられるものだが
そんなことは知ったことではない。
明羅女史がたちまち天狗をホールドして注射が執り行われる。
あんたもやれと言われたが、いろいろな意味でやりづらい。
じたばたもがいた天狗の裏拳を喰らって危うく失神しそうになった。
夕方、だいたいの天狗達が帰還する中、薬屋特製ドリンク剤を飲んでいる明羅女史を尻目に
やっていない妖怪をチェックする。
そこになんと中間管理職狐の名前を見つけて愕然とする。
何とも言えぬ虚脱感。 捕獲チームもスペルカードを使い切って疲れ切っている。
どうやって捕獲しようかみんなで悩む。
結局のところなんとかなった。
突然目の前にリボンを付けた隙間が出現して、紐でぐるぐる巻きにされた中間管理職狐が
放り投げられたからだ。
そのまますぐに注射をしてから、堅く縛ってあった紐をほどく。
まるでボンレスハムである。
結局全員分が終わったのは深夜回ってからのことである。
皆様お疲れ様でした。