□月 ●日  No672 すべては自己責任?


久々に小兎姫が会社にやってきた。 なんでも車を盗まれたという。
空飛んで帰ればいいだろうと言ったら「ドアホ」と言われた。


よくよく聞くとなんとその車。妖怪が擬態した物だったらしい。
それなら犯人がトイレに行っている間くらいに元に戻って脱出すれば済む筈だが
犯人がハイオクガソリンを入れたとかで、しばらく犯人の逃避行に付き合っているという。
普段ならお前で勝手にやれって言うところだが、運悪く閻魔様がいた。
結局なだれ式に手伝う羽目に。
と、言っても手伝うことと言ったら、車に擬態したまま戻ろうとしない妖怪を説得するだけである。


ボスの許可もあっさり下りて、社用車を借り追跡行
暇をもてあましている閻魔様と小兎姫 助手席と後部座席で雑談地獄。
小兎姫も閻魔様もすごいおしゃべり。とりとめはないわ、大音量だわ居るだけできつい。
飲み物買ってこいとか、パンが食べたいと人をパシリ扱い。
本来の目的はどこへやら気分はピクニックとかドライブである。


どうにかこうにか追いついて、パーキングエリアで止まっている妖怪に話しかける。
顔を知られているのか割とスムーズに話ができた。
なんでもこの犯人。今居る暮らしが嫌で逃げたいと言って飛び出したらしい。
不安に打ち拉がれている犯人が可愛そうで放っておけなくて一緒にいたらしい。
小兎姫が「お前の言い分は聞かない」と凄い形相で睨んでいる。
組織のリーダーとしては間違いない行動だがちょっと酷いと思う。


そこに犯人登場。我々の姿を見るなりすぐに逃亡。 当然の行動。
閻魔様のドロップキックを食らってそのまま突っ伏す。 これまた当然の展開。
鍛え上げられたわけでもない体はあまりに弱々しい。
私も似たような物だが。


そしてそれぞれの言葉で説得開始
私 不幸自慢 朝倉の話をしてヒートアップ 無反応
小兎姫 軍隊モードで厳しく。 鼻で笑われる
閻魔様 もはや説得の体を成してない あくびで返される。


見事に打ち拉がれた三人。
復活した犯人に終わりですかと聞かれて、倍ダメージ。
いっそ力尽くでと思った矢先、
ボスがヘリでやってきた。


たった一言「うちで働け」と言い残して去っていった。
しばし沈黙。


犯人はすごすごと家に帰っていった。
警察には結局通報しないことで折り合いがついた。
あの妖怪はあとで小兎姫からおしおきを受けることになった。
あとで閻魔様と一緒にボスに尋ねたら、犯人は自分が必要とされていることを確認したから
満足したのだという。
小さな成功体験も与えないまま仕事を与えているのだから上手くいかないのは当たり前と言って
笑っていた。 私も閻魔様もぐうの音も出なかった。