□月 ●日  No718 呪いのグッズの投棄場所


ヴァンパイアの主人のところへ納品したらなぜか小兎姫がいた。
いつになく気まずそうに苦笑いをしている。
正直言ってこういう小兎姫に関わると碌なことがないのだが
聞いても居ないのに勝手にメイド長が説明し始めてしまった。


霊能局の仕事の中に、自我に目覚めてしまった危険なモノを幻想郷に送る仕事というのが
あるらしい。 モノというのは文字通り「モノ」であって生き物ではない。
たとえば、呪いの人形が人間を呪い殺して増長した場合や、呪いのビデオが人間を心臓麻痺に
してしまったとき、ノートの姿をして書かれた標的を殺してしまう奴など多種多様である。


さてこういった危険なモノがどこへ行くのか。
私はてっきり無縁塚にでも放置されるのかと思っていたが、霊魂を呼び寄せる力場になりかねないと
いうので禁止されているらしい。
西行妖の一件以来、危険な謂われのあるものに関しては管理を徹底するか
投棄しない決まりになっている。


そこで専用の廃棄場所が必要となるのだが、隙間送りにするには危険極まりないし
完全な処分が同時に必要になるわけだ。
そこで霊能局が目をつけたのは幻想郷各地の危険スポット。
ここに危険アイテムを投棄することで住んでいる妖怪たちの退屈を解消しつつ、
危険な謂われの物品を処分できるわけだ。


こういう危険な妖怪は暇にさせておく自体がとても危険である。
暇な人というのは碌なことを考えない。 ネガティブな思考はネガティブな思考のまま
ラビリンスに陥るし、最終的には破滅的な結末になることだって少なくない。


ヴァンパイアの主人は小兎姫に先日もってきた呪いの人形がデスマシン妹君に48秒で
TKOされたと厳かに告げた。 言っていることは酷い内容だが、彼女のカリスマが
荘厳な雰囲気を作るのであろう。
人形にしてはよく持った方だと思う。
人形遣いのアリスやメディスンメランコリーが聞いたら憤慨することだろうが。


小兎姫に危険妖怪は数あれどなぜデスマシン妹君を選んだのか聞いてみた。
風見女史や比那名居の娘、薬屋など危険な妖怪なら幻想郷にごまんといる。
すると小兎姫があっけらかんとした表情でこう言った。
「マイウエイだから相手が恨みの理由を言っても無視して処分してくれるから」
だそうだ。


以前は閻魔様に暇つぶしと言うことで宛がわせてもいたが、
あまりの説教でさすがの呪いのグッズも消耗してしまい、見るに堪えなくなったので
一瞬で消し炭にしてくれるデスマシン妹君に白羽の矢がやったらしい。
ヴァンパイアの主人に言わせると、一番大きいのはむしろ罪悪感を感じずに
合法的にためらわず破壊活動ができることだと言っていた。


呪いのグッズもアホではないようで、小兎姫が持つ厳重にパッケージされた
つづらの中から「どうか紅魔館送りは勘弁してくれ」と命乞いをするグッズの声が聞こえた。
いろいろな意味で世も末だと思った。