□月 ●日  No673 変化を拒まないこと


列車運行中に大きめの地震が発生したため、列車を止めて点検。
数十分後、黄色いドクター列車が線路の無事を確認して運行が再開された。


霧雨のご息女の家も耐震補強の話がでる。
耐力壁は問題ないが突き上げるような衝撃に対しては弱いと判定された。
建物を維持する魔法にチューニングを加えることで調整する。


幻想郷では比較的小規模な地震が多く起こる。
天界に住む比那名居一族が大震災になるのを防ぐために都度地面を揺らして
地盤のストレスを解消しているのだという。


地震とは地殻変動の一要素である。
そして地殻変動はこの星に住むあらゆる生き物の運命を左右する。
朝倉の話では、魚が生まれたのも、恐竜が生まれたのも、そしてほ乳類が地上に君臨したのも
そして猿が二足歩行を始めたのも地殻変動がもたらしたものだという。
ヴァンパイアの主人における運命を操る能力に似ていなくもない。
ただしこの効果は不特定多数に及ぼし、しかもその結果は常にはっきりしない。


ところが幻想郷にとって地殻変動は曲者である。
そもそも幻想郷とは幻想になった者が住う場所。 当然その中には環境に適応できずに
淘汰された生物も多数保護されている。
そうした中で、幻想郷に変化をもたらす地殻変動はそうした生き物たちに再び試練を与えるものである。
当然中耐えられず、幻想郷の中すら消え去った生き物もいる。
私にはそれが本末転倒だと思っていた。


朝倉にその話をしたら、そんなことをしたら幻想郷は数年で破綻するらしい。
変化するためのあそびを常に設けて、妖怪の淘汰を起こしやすくすることは
幻想郷の維持のために必要だというのである。


私はかつて幻想の世界は変化しないものだと思っていた。
しかし過去に何度も取り上げたように変化を拒んだものに未来はないことはわかる。
しかし一度淘汰された幻想の生き物に同じような異変が起こしたら確実に全滅するのではないか。


そんな疑問をぶつけてみると、それは「運」によるものだと言うのである。
つまり、生き残るかどうかはほとんど偶然の産物であり、同じような異変が起こっても
全滅するとは限らないというわけだ。
実際、恐竜は花によって住処を奪われていったが、最後には花も食べられる恐竜が現われたことからも
見て取れる。 花に適応した恐竜もいたのである。
だから同じような異変が起こっても問題ないのだと言えるわけだ。


すべては変化のために幻想郷の様々なルールは存在するのだろう。
幻想郷が強力な世界であり続けているのは変化を拒まないことにあるのではないか
そう思えてならない。