△月 □日  No477 妖怪達まで飛行訓練


幻想郷の外の妖怪たちはおいそれと空を飛ぶことができない。
最近はUFOとかで誤魔化すこともできなくなってきたため
移動手段は人間と変わらないという困った事態になっている。


ここで問題となるのが地上の生活に慣れすぎて満足に空を飛べなくなった妖怪たちだ。
彼らが幻想郷行きを希望しても、空を飛べないと満足にスペルカードルールを適用する
ことすら難しくなってしまう。
そこで最近、妖怪たちの空中生活をサポートするためにちょっとしたジオフロント形式の
妖怪用リハビリ施設がオープンになった。今日は納品と施設写真撮影である。 
入り口には博麗大結界を模した結界が張り巡らされており、中にはいると
幻想郷の自然が再現された場所があり、そこで飛行訓練を行うことになっている。


入って早々、職員に飛べますか?と聞かれて、「できない」と答えたら
重症棟へ行けと言われて気が滅入る。 
自分は妖怪じゃなくて応援だと入場バッチも見せてようやく納得してもらった。
妖怪の中には殆ど人間と同化してしまい、人間として老衰死を
遂げる者もいるかららしい。


現地で玄爺と合流。 かなり苦戦しているようで言葉数が少ない。
講義を手伝ってくれと言われ、壇上に上がったら
私のことを「空を飛ぶのを忘れた妖怪」と紹介した。
抗議のまなざしを送り、時間を見計らって玄爺に事情を尋ねたら、
妖怪たちに自信を持たせるためだという。 かなり深刻な事態だと感じ入る。


今日納品したのは幻想郷でも使われている妖怪用の薬品類である。
墜落する妖怪の中には受け身の姿勢すら取れずに怪我をしてしまう者もいるそうだ。
中には空を飛ぶのを諦めて職業訓練校へ行く手続きを取った者もいるらしい。


写真を撮影して、会社に持ち帰ったら朝倉と魂魄が必死に写真の中身を精査していた。
誰が見ても施設を見ている目ではない。 焼き増ししろと言われた写真は
いずれも妖怪少女の写真と、施設職員の姿だった。
プリント用紙をもらいに北白河のところへ行ったら、無言でパイプ椅子とハンマーを持って
席を外してしまった。 とりあえず焼き増しの仕事は必要ないようだ。