△月 □日  No476 西洋化の悲劇


薬屋に納品に行ったら妖怪たちの長蛇の列に出くわす。
人混みをかきわけてどうにか前に出たら、ブレザー兎と詐欺師兎が
軟膏を売っていた。 何をする薬だと聞いたらなんと水虫の薬だった。


妖怪たちの足下は寒い。
一部の元気な妖怪を除いて、ズロースの類を履いてみたり、カイロカードを
使用したりしている有様だ。 そこに、幻想郷で西欧文化が流れてきた。
妖怪たちは我先にブーツや靴に飛びついたというわけだ。
天狗ですら高下駄ならぬ高下駄型の西洋靴を履く始末
そして、悲劇は起こった。


妖怪たちの足から悪臭が漂い始めたのだ。
隙間妖怪曰くそれは少女臭だと言う。 


幻想郷の人々は今まで草履暮らしや裸足が基本だった。
水虫に関する知識がまったくなかったのである。
妖怪たちも恥ずかしさから誰にも相談できなかった。
そこに現われた救世主 それが薬屋だったわけだ。


さっさと納品を済ませて退散しようと思ったら列の中にメイド長の姿を発見する。
目があった。 二人だけの沈黙が漂った。
こっちが質問していないのに、なぜかメイド長が弁解を始めた。
「お嬢、いや 妹さ いや パチュ いや 美鈴 に頼まれて」だったと思う。
いい加減可哀想になってきたので、無言で立ち去ろうとしたら
目の前をナイフが横切った。 人生終了の予感。


メイド長が小声「黙って」という言葉を発していたのは分かっていたが
遮って「最近風邪が流行っていますね」と言ったらようやく機嫌を直してくれた。
やれやれである。


そのことを魂魄に話したら、男だったら黙ってもらう代わりにモノにしろと言われた。
「モノにしたあと、私の身の安全は保証されますか?」と聞いたら
無言で煙草を吸うばかりだった。 魂魄に聞いたのが間違いだったようだ。