□月 ★日  No572 モーフィング神霊様


配達をしながら適当に雑談。
幻想郷には神霊と呼ばれる人種がいるらしい。意味消失した亡霊がなにかの謂われによって新たな意味を
与えられてカミと成したものだと言われている。
月にはそんな神霊がけっこういるらしい。 
ただ、彼らは決して自助努力でカミへと昇格できたわけではないという。


神霊と言えば、有名どころで平将門がいる。
例の神社のおねえさんに言わせると、生前は人のいいおっさんで豪族になって祭り上げられたら
いつの間にやら朝敵になっていた人だったらしい。
実際に彼が朝廷の敵と言われても付いていく人はたくさんいたというから彼の人柄、カリスマは
かなりのものだったそうだ。


平将門の乱は今でも語り継がれる大事件ってことになっている。 がしかし、
彼が今日のように祭り上げられたのは江戸時代になってからだそうだ。
彼の運命は将門の乱のとき一度終わっていたのである。


彼が祭り上げられたのはなぜか。 それはちょうど江戸に首都機能が移転していた時と関係がある。
江戸への遷都が行われたとはいえ、江戸時代初期では上方文化が花開いていた。
そんな時、カウンターカルチャーとして祭り上げられたのが平将門だったわけだ。
彼は上方に対して反抗した英雄であり、彼の意思は後世に語り継がれるってことになった。
なぜか祟り神の属性が加えられていた。


こうなると神霊としてはやっぱり信仰されている手前乗せられて行動することになる。
かくして「みんなが祟り神だって言ってますんで祟り神やります」といった塩梅で
祟り神をやっている輩が多いそうだ。


お姉さん曰く、カミ様のサミットをやっていると、そういう話がごまんとあるそうだ。
「俺魔王になっちゃった」だったらまだ可愛いが、強面の野郎がいきなり少女の外見になって
「私萌えキャラになりました」となった日にはただただ悶絶するしかない。
ビフォーアフターの写真を見せてもらったら、格闘ゲームに出てきそうなモヒカンレスラーだった奴が
そのまま紅魔館にいても違和感がないような美少女に姿を変えていた
整形手術とかというレベルではない。


実は彼らの属性は自分で変えられるものではないので、ある日突然萌えキャラになってしまうと
鏡を見ても自分と認識できなかったり、女性の姿に変わったことに気付かずに髭をそろうとしたりと
色々起こるそうだ。 神霊稼業も楽ではないといったところか。


おねえさんにもビフォーアフターがありますかと尋ねたら、顔色が一気に悪くなった
これ以上聞くのは躊躇われたのでそそくさと退散した。