□月 ★日  No571 ゴミ屋敷のひみつ


香霖のところへ棚卸状態を確認。様子を見るのを怠っていたら、案の定凄いことになっていた。
店の中はそこそこ整っているのだが、倉庫に行けばそこはカオス空間である。
ゴミ屋敷といっても過言ではないことになっている。


十六夜月の影響だったり、隙間妖怪の気まぐれだったりと様々な要因が絡むとはいえ、
使えそうなものはとりあえず持って帰る香霖の性格を考えればそうなるのは自明の理だが、仕入から
不良在庫を追いかけられない問題がここにきて噴き出したというべきか。


商品というより商品になる予定のゴミを片付ける。
すると奇妙なことに気がついた。 見つかったものの中に防弾チョッキやら防犯フィルムなどの
顕界で身を守るためのものがゴロゴロ出てきたのである。


不思議に思って最近の幻想郷は物騒なのかと尋ねたら、いたって平和だという。
メトセラ娘や自称現人神の活躍で凶悪犯罪はかなり減っているらしい。
今の幻想郷はそういうファッションが流行っているのかというとそうでもない。
防弾チョッキの埃を払って、店頭に並べようとしたらやめてくれと言われた。
売らなければただのゴミだと文句を言ったら、それはエレンのマジックショップに持っていくという。
私としてはゴミをそのまま放置しては困るので、マジックショップへ同行することにした。
香霖がやめてくれと言うのを無視。 荷物が多いから手伝いがいるだろうと
説得して強引についていった。


能天気ふわふわモードのエレン嬢の目の前に荷物を置くと、毎度どういうしかけか知らないが
ファンシーな店構えがみるみる物騒な店構えへと姿を変える。
香霖の依頼は、この防弾チョッキの作りを霧雨のご息女が衣服を展開するときに混ぜるように細工してほしいと
いうものだった。 衣服生成の魔法で使用する触媒に手を加えて衣服にケブラー繊維を配合するように
してほしいらしい。


エレン嬢は「本当に持ってきた」と驚きの表情を見せていた。
事情を聞いたら、月兎が使う銃から身を守るためだという。
銃は人間にとっても妖怪にとっても容易に命を奪う恐ろしい武器だと幻想郷では教えられている。
銃の進歩が幻想郷完全分離の一因になっているとすらいうほどだ。
香霖は霧雨のご息女や博麗の巫女が月に行くときに少しでも怪我しないようにと、休みも返上して
身を守るための衣服を探していたとエレン嬢から聞かされた。 香霖は終始顔が真っ赤だった。
そんなことだから倉庫を整理する暇もなかったというところなのだろう。
ルーコトを呼ぼうとしたらエレン嬢に止められた。 事情があるとはいえ、やるべきことをやらないのは
本人の責任だというのである。


代わりにエレン嬢は一枚のカードを手渡してくれた。
そのカードを実行すると倉庫がみるみるうちに整理されるという。高度なスペルカードだった。
魔力が持たない人が使えるように、あらかじめエンチャント加工も施されていた。
「愛しの女の子の為だから、これくらいで勘弁してやろう」
エレン嬢はまるで小悪魔のような笑みを浮かべていた。