□月 ●日  No1011 幻想郷的古物ロンダリング


エレンの店に納品に行ったら丁度香霖がソクラテスと商談中だった。
霧雨のご息女から酷い値段で買い取ったアイテムを売り捌くためだ。


マジックショップエレンのチェーン店。
ここには幻想郷のマジックアイテムが一手に集まると言われている。
同時にここの店は古物商同士の物品取引にも用いられる事が多い。


古物商というのは業者同士の取引システムと言うものが確立している。
こうすることで、古物商は安定した在庫状態を維持することができる。
また店に置き続けることで新しい謂われが付加され、新たなマジックアイテムとして高値取引される場合もある。


香霖堂はどうしても奥まったところに店を構えているのでマジックアイテムの類を
いつまでも在庫として置いておくことは向かない。
また地下の保管庫はうちの会社でほぼ私物化しているため、中が酷いことになる前に
こうして商品を処分しているのである。


エレンに盗品を売って大丈夫なのかと尋ねたらロンダリングの方法は幾らでもあると言われた。
渡された紙を見ると重要アイテムについては返還要求に応じるような通達がなされていた。
大抵は足下を見て少しばかりの手数料をいただくらしい。 酷い話だ。


エレンのマジックショップの中に同業者に混じって誰が見ても顕界の人間にしか見えない奴らが
混じっている。 エレンに尋ねるとアストラル体になって幻想郷を視察している魔法使いらしい。
ここでマジックアイテムを視察しては顕界で複製しているという。
そういえば、メリーや岡崎が幻想郷から密輸したとしか思えないアイテムを使ってもお咎めがなかったが
そういう事情のようだ。


ノウハウが奪われないかと尋ねると、そうして作られたアイテムは巡り巡って自分の手元に届くから
問題ないという。 むしろ幻想郷で入手しづらい材料で作ってもらって送られてきた方が都合がいいという。


香霖に首尾を聞いたらあまり高く買い取って貰えなかったらしい。
ソクラテス式神なので交渉で値段を上下させるのは非常に難しいそうだ。
そこの使い分けがエレン嬢は上手いのである。


帰りがけに手に入れたお金で買い物に付き合う。
結局沢山持って行ったアイテム類は日用品に姿を変えてしまった。
何となく損した気持ちになったのは言うまでもない。