□月 ★日  No587 妖精テラフォーミング


岡崎が久々に上機嫌で出社している。 列車の改造工事が完了したとかでそのお披露目が行われた。
外見こそ私が普段乗っている列車とあまり変わらないが、なんと月へ直接乗り入れができるらしい。
ボスは商売のためと言っていたが、本音は万が一の保険のためだと思う。
先頭車両はスペースシャトルとしての機能も持っているとかで、幻想の世界から追い出されても
単独で大気圏に突入して生還することもできるそうだ。


朝倉はヴァンパイアの主人が月へ降り立つことについて妙なことを言っていた。
ヴァンパイアの主人が真のリーサルウエポンに気がついているかどうかというのである。
それは紅魔館にいる妖精メイドたちである。 あまり役に立たないという妖精メイドだが
月に降り立ったとき妖精たちを正しく運用すれば、月に対して脅威になるらしい。


そもそも妖精たちは自然のシンボルである。その自然を誰が作るのかというとそれは生物である。
古来水と大地しかなかった土地を今の環境にしたのは生命の力であった。 その力のシンボルが妖精である。
妖精たちは制御基盤がなければどこまでも暴走する。 事実過去に地球全体を氷に閉ざしたりもしている。
もちろん、地球にとってマイナスに働くばかりではない。
妖精の大暴走が有毒と言われた酸素を使う生命を生み出し、全休凍結は結果的に植物プランクトンの大繁殖を導き
この星を今の酸素濃度に導いたと言える。


こんな妖精たちが月に降り立ったらどうなるだろうか。 数匹ならあまり影響はないかもしれないが
何十匹も送り続けたら、月の魔力の影響をどこまでも受けて大暴走を始めることは想像に難くないという。
そうなれば月の環境はたちまち激変して月人たちが長年培った環境を破壊してしまうだろうと言うのだ。


この列車があればそんな妖精たちを大量に月に送り込むこともできる。
妖精の代わりにルーコトを送りつければきっとえらいことになるだろう。
もっとも満載するのはルーコトでも妖精でもなく、たくさんのワインと日本酒とおつまみの数々になりそうである。
帰りは桃でも持ち帰るのであろうか。 どうせすぐ傷みそうな気がする。


岡崎は今回のプロジェクトで少しやせたらしい。
スカートのサイズが小さくなったと喜んでいた。 完成式典でしこたま甘いものを食べ始めているので
速攻リバウンドしそうな雰囲気である。 里香女史がスタイルを維持したままやせるなんて羨ましいと言っていた。


浅間は月への配達がはじまったら自分も行きたいと言って回っている。
どうしてかと聞いたら真っ先に仲良くなってお酒を飲みたいと言っていた。
正直ずっこけた。