□月 ★日  No588 コンティニューは予約制


博麗の巫女が月へ行っても別にうちの会社で特別なことはないわけで、いつものように通常業務である。
博麗の巫女がいなくなることで妖怪たちが好き勝手行動するかと思われたが、自称現人神が
治安維持活動をしてくれるらしいので問題はないようだ。
むしろよく働く分始末が悪い。 勘違いした正義の実行者が大暴れするのはいつの世も大迷惑だ。


この時期の三途の川は業務がきわめて滞りやすいらしい。
暖かくなって居眠りを始める死神が多数おり、新人の死神さんたちがとぎまぎしながら業務に
あたっているためだそうな。
閻魔様の腰巾着である死神さんもご多分に漏れずいびきをかき涎を垂らしながら豪快に寝ている。
胸元が見えて色っぽい筈だが、がに股で太ももをぽりぽり掻いていて台無しである。
どうにかこうにか起こして、ちょっとした打ち合わせをすることになった。


万が一博麗の巫女たちに何かあると、彼女たちは死後の世界ということでここを通ることになる。
マイウエイな彼女たちのことだから意味消失は考えにくいのだが、リスクを減らすために
三途の川を素早く渡りきるための手続きをとってしまうのである。
阿礼乙女転生手続きの応用である。
具体的には三途の川の渡り賃の頭金を先払いしておいたり、各種手続きを代行して簡略化するなどである。


これを怠ると素早く戦線復帰ができなくなる。
たとえば紅魔館地下でデスマシン妹君と対峙したとき、コンティニューできないというのは
特殊事例で取り調べに時間がかかるためだ。 生き返るとしても戻る体がふっとばされては
いかんともしがたい。
そうした問題を解決するため、あらかじめ手続きを行っておいてから本人がやってきたときに
すぐに決定ができるようにするのである。


今回のプロジェクトに案の定死神さんは不満の声を上げた。 三途の川を渡る船は手漕ぎ。
いくら距離を縮められるとは言え、全力で漕いでいたらとても疲れる。
腰が痛くなるのは嫌だと婆臭いことを言われて絶句する。
VIP仕様とよばれる川幅で船に乗らなくてもよいというやりかたもあるが
ほかの死神の迷惑になるとかでいろいろと規制があるようだ。


三途の川を渡りきったそこにはすでに魔界のスタッフにより線路が敷かれている。
これでやられても安心というわけだ。
死神のお嬢さんから三途の川の渡り賃をディスカウントしてくれると提案があったが
まだ死ぬ予定はないですと答えたら、これから何度もお世話になるから私を頼れと言われた。
何度ってなんですか 何度って。