□月 ○日  No507  幻想郷の墓地事情


博麗神社の遙か西、幻想郷の共同墓地がある。
博麗の巫女がしばしば訪れる場所のひとつである。


今日は久しぶりにここに墓石を運ぶことになった。
墓石と言ってもその姿は外の世界とあまり変わらない。
墓石の形状はそれ自体意味を成しているため、そう易々と変えることが
できないからだと聞いている。
7日後に納骨があるというのでそれに会わせての仕事である。


幻想郷でも外の世界と同じように死体は荼毘に付す決まりである。
理由はふたつ。 ひとつは感染症対策、そしてもう一つは復活を防ぐためだという。
幻想郷ではしばしば死んだはずの人間がまたむっくりと起き上がることが
あるらしい。憑依による物だと周囲に危害を加える可能性が高い。
そもそも憑依する亡霊は物理的な目的遂行のために死体の乗っ取りを
企てるからである。

 
しかしながら、死者が復活してそのまま蘇生してしまうケースもある。
幻想郷でもお通夜が存在するが、もしもお通夜のタイミングで
むっくり起き上がったらそのまま飲み会に移行するのが習わしらしい。


薬屋に後者の理由を聞いてみたらこういう答えが返ってきた。
幻想郷では検死技術が発達しておらず、仮死状態でも死んだことにされる場合が
あるというのである。 
薬屋が来てからはそういうことは殆ど無くなったが本当に迷惑な話だ。
人工呼吸器を使うだけで復活したというケースもあるらしい。


さて、墓石を設置したあと博麗の巫女に墓石を処理して貰う事になっているのだが
このとき墓場で色々と異変が起こる。
異変と言っても危険がある物ではない。宙に漂う亡霊たちがみんな逃げ出すのである。
逃げ出すくらいならさっさと三途の川を渡って欲しいのだが、意味消失が怖い
自称墓場警備員みたいな亡霊もいるようだ。


業務遂行が確認されたら管理人さんでもある神主様に完了証を貰う。
適当に世話話をしたのだが、最近は亡霊でも根性なしが増えて、憑依するような
気骨のある亡霊は減ってしまったと言っていた。
時代が変われば亡霊も変わる物らしい。