□月 ★日  No599 ダブルミーニングにご用心


幻想郷の世界では謂われが重要な意味を成してくる。
しかるに謂われを柔軟に使える者は、幻想郷において大きな力を得ることができるわけだが
そのダブルミーニングを取り違えると大変なことになるようだ。


紅魔館ではロケットの発射が迫っている。ロケットは衛星が捕捉して
基本的に我々は手を出さないことになっている。
商売相手が焦土と化すのではないかと、ボスに尋ねたら万に一つそれはないと言われた。
ボスがヴァンパイアの主人に期待しているのは新しい仲間を捜すことであって戦闘ではないということだ。
つまり最初から勝利することを期待されてないのである。 本人が知ったら烈火のごとく怒るであろう。
我々の仕事はあくまでヴァンパイアの主人たちの退路を確保することにあるらしい。
しかもそれは博麗の巫女を最優先というものだ。


エレン嬢は紅魔館の最近の動向についてあきれた表情をしている。
ふわふわぱちぱちの口調を意訳すると、人間がやってきた数々のエラーをわざわざ
再現していると言うのである。
顕界でわざわざ太陽信仰を示すアポロという名前を用いたのも、
そもそもは月の力には干渉しないというジェスチャーである。
 その打ち上げのための数々の方策は、月の都を発見できなくするために敢えて用いたものである。
その数々をわざわざ再現しているのだから本来ならば月の都に行くのは不可能に近いのだが
それを後押しする連中がいるということである。


妖怪資本に言わせれば月は火薬庫みたいなもので、下手に干渉したら紛争地域になることが
目に見えているそうだ。
資源開発競争の舞台にもあるので高度なバランスを保っていた都が自壊する可能性もあるらしい。
そうなれば、長寿命の難民を抱え込むことになって、ろくなことにはならないだろう。
我々の世界では長寿命の人間は、社会保障制度も長引いて費用ばかりかかる迷惑な存在なのだ。


紅魔館から巨大な鎖の追加発注がくる。魂魄がこれを使って何かプレイをするに違いないというので
ピコぽんハンマーで動かなくなるまで叩いておいた。
エレン嬢に言わせれば、鎖というのはいろいろな謂われを持たせることができる便利グッズらしい。
絆を示す意味もあるし、封じ込めるという意味も持たせられる。
この星の大気組成や環境をロケットの中に封じ込めるという意味として運用できるらしい。
その分いろいろと細工もできるという。


幻想郷で久方ぶりに香霖と世話話をする。 月に行ったらどれくらいで帰ってこれるのかと聞かれたので
ロケットだと数週間、列車だったら1日と答えておいた。
香霖がなにやら慌てていたが一体何を考えているのだろうか。