エレンのマジックショップで何故か橙を発見するもなにか様子がおかしい。
紅白を基調とした服は漆黒に染め上がり、何よりメスではなくオスの面構えをしている。
まさに橙の色違い。 思わず名前を聞いてみたら、使い魔のソクラテスだった。なんてこった。
まさに少年橙。朝倉が見たら即襲いそうな雰囲気すらある。
さらに驚くことにきちんと店番をしている。 お客が来たらいらっしゃいませと挨拶するその様は
香霖よりもはるかにレベルが高い。
今日エレンのマジックショップへ足を運んだのは五右衛門風呂底にある石のスペアを買い求めるためだ。
現地法人の詰め所で徹夜仕事をする人のために用意されたものだ。
五右衛門風呂とは、桶の真下に熱した石を入れるタイプのお風呂である。
お風呂のふたを乗せた状態でそのまま乗っかるようにお風呂に入る仕組みだ。
知らないと確実に足を火傷する。
五右衛門風呂は中途半端に幻想行きになっている品物である。
というのも顕界のガスメーカーも未だに五右衛門風呂用熱源を販売しているからなのだ。
そういうわけで魔法で動く熱源を現地調達しないといけなかったりする。
幻想行きになった品々。幻想郷に持ち込める物品はそんなルールがあるのだが
実際のところその基準は曖昧で、幻想行きしてもいいと思っていそうな品物が
その後継機種によって復活していたりしており有名無実化していると言っても良い。
消えては居なくても廃れてしまった物を幻想行きとして定義する向きもあるが
そこまで単純ではなさそうだ。
さて、買い物をしているとソクラテスが妙な質問をしてきた。
何故人間はお風呂に入りたがるのかと言うのである。
考えてみればソクラテスは猫である。猫は基本的に自ら水には入りたがらない。
お風呂という概念に疑問を感じるのは当然かも知れない。
あまり大きな声では言えないが妖怪の中にはお風呂嫌いが少なからずいる。
そしてとんでもない臭いを発している。
新入社員も妖怪たちの写真を見て「お近づきになりたい」と言うがこれで千年の恋も醒める。
衣服は常にコロンでにおい付けされ、近寄っただけで胃の中身がこみ上げてくる。
とりあえずソクラテスには臭い対策と言っておいた。
その後帰ってきたエレン嬢に話を聞いたら、幻想郷の浴室は水を沢山使う贅沢なものだという
認識を持った妖怪が特に海外発の妖怪で多いと言われた。
そういうった妖怪は香水でにおいを隠せば問題ないと言っているそうだ。
紅魔館の下着類がほぼ使い捨てだという事実を思い出し、なんとなく納得してしまった。