□月 ●日  No661 幻想郷で所得税?


幻想郷から雇用した妖怪たちの給料日。 この日になると毎度おなじみのやりとりが繰り広げられる。
それは天引きされた所得税のことである。
幻想郷には基本的に税金はない。 税金はないが祭りなどのイベントではお金を出し合わないと行けないし
治安活動はボランティアで行わないといけない。
紅魔館に自主的に物を納めている希なケースもあるが、それはヴァンパイアの主人による庇護を求めるためのもので
世間一般の税金とは一線を画している。


そんな幻想郷の住民達に所得税の話をするのは一苦労だ。
幻想郷の住民と言えどうちの会社には行ったら顕界にいる人間と同様の社会保障は受けられるように
しないといけない。 たとえば幻想郷から顕界へと派遣されている朝倉のような人材は、
病気になったら顕界の病院を頼ることになり、その費用を健康保険証で賄わないといけない。
妖怪の場合、年齢は40歳と仮定した決め撃ちとなり、介護保険料などの支払いも行わないといけない。
もっとも妖怪たちに介護保険による補助金が支払われることはないわけで、この辺で一種の取引が
成立しているものと思われる。


このルールにより、妖怪たちは顕界に言ったときに自動車の免許や各種資格を得ることが可能だ。
特に河童達は合法的に顕界から技術を持ち出すために各種資格を口実にして沢山の教材の購入に
一定の補助を受けることができる。


と、このように妖怪たちでさえでも社会保障を受けられるということを説明しないといけないわけだが、
妖怪たちは直感が優れていて、こちらが騙すような表現を使おうものならすぐに態度を硬化させてしまう。
こういう相手をやっつける簡単な方法がある。


自分の給与明細も見せる。


だいたいこれで黙る。 自分の給料がばれる自爆兵器だが仕方あるまい。
重要なことは天引きされているのは自分だけではないということを認識してもらうことだ。


私がいつものように、その手段で所得税の話をしていたら北白河が割って入って来た。
私に何故まだるっこしいことをしているのかと聞いてくる。
事情を話すと、北白川は文句を言ってきた妖怪たちに「顕界と幻想郷で商売をするための免許料」だと言うと
相手は何故か納得してくれた。


幻想郷で商売をするためには暖簾に応じた免許料が存在するのだという。
酒造の免許 金貸しの免許 エトセトラエトセトラ。 通常従業員の給料は黙って天引きしていたのだとか。 
要するに私が単純に無知だったというわけだ。 
幻想郷の社会システムには驚くばかりである。