□月 ●日  No675 竜宮の使いで健忘症


エレンのマジックショップに納品 最近大口の契約が増えてなによりである。
今日もショタ橙ことソクラテスがお出迎えする。 例の神社のおねえさんから写真撮影するようにと厳命されてきたので
とりあえず天狗のコンパクトカメラで撮影。


いつものように商品を倉庫に運んでいると、見たこともない人影を見つけて慌てる。
噂には聞いていた竜宮の使いと呼ばれる人物「永江 衣玖」だ。地上に現れるのはとても珍しい
天然記念物級の妖怪である。
観察していたら店のものを適当に買い求めてそそくさと店を後にしてしまった。


奥からエレン嬢がやってきたので竜宮の使いについて試しに聞いてみることにした。
竜宮の使いは地上で起こる様々な異変、おもに地殻変動について警告を発する妖怪と言われている。
エレン嬢に言わせれば、正確には地面から湧き上がる電磁波を観測することできるのだというのである。


地震は地殻にたまったストレスが解放されたときに起こる。だがストレスが解放される直前に
すべての均衡が崩れる瞬間がある。 圧縮された地盤が砕ける瞬間である。
このとき高圧にさらされた地殻は強力な電磁波を出す。 これが空に作用するといわゆる地震雲になるという仕組みだ。
竜宮の使いはこうした地下より発せられた電磁波を解読して、地下で起こる異変を周囲に知らせることができると
そんな仕組みらしい。


なぜエレン嬢がそこまで知っているのかと尋ねると、自分の魔法は竜宮の使いをモデルに作られたと
言っていた。 永江 衣玖はエレン嬢にとっては師匠みたいな存在らしい。
「ただ電圧を上げることができても電流制御ができない」というのはエレン嬢の談
おかげで半分くらいは彼女のオリジナルとなったという。


会社に戻って朝倉に竜宮の使いを目撃したと言ったら、人生の運の半分を使い果たしたといわれてしまった。
これだったらカメラに収めておけばよかったと思う。
早速ソクラテスを撮影したフィルムを現像に出したら見事に真黒になっていた。
永江 衣玖に対抗措置なしで近寄ったのでフィルムが感光してしまったのだという。


ここからが不可解だった。
いきなり里香女史がやってきて、私を移動式ベットに無理やり寝かせると、体をぐるぐる巻きにして
医務室に連れ込んだ。
何か新手のプレイなのかと思いきや、採血をはじめる。 朝倉があわてた表情でやってきて
冴月に銃を突き付けられ。


気づいた時にはベットの上だった。 とりあえず早退して良いといわれたのでこれ幸いとばかりに
書類を書く。 今日の日付を書いたらそれは三日前と言われた。
どうやら健忘症にでもなったらしい。


帰ったら冷蔵庫の中身の賞味期限が過ぎていて大損した。
あとで朝倉にたかるとしよう。


あとでおねえさんに烈火の如く怒られた。