□月 ●日  No701 祭りの準備


夏祭りの準備のため資材搬入に追われる日々。
しめ縄とか竹とか やたら長いものの搬入に手間取る。
なにしろうちの会社の乗り物では乗らないのだ。
そこで妖怪たちの応援を借りて半ば人力で物品を運ぶ。
でかいトラックが欲しい。 かなり切実に。


例の神社に行ったら自称現人神が韓流ドラマを観て涙を流していた。
邪魔するのも悪いので、商品だけ置いておいてお暇する。
韓流ドラマが幻想行きした事実よりも自称現人神の面食いぶりに苦笑した。
考えてみれば博麗の巫女も相当の面食いだった。
ここもこれから祭りで大忙しになる。


夜雀のところへ夜店開店用の資材を運び込む。 
ちっとも幻想入りしていないので入手困難な備長炭を大量に搬入する。
夜雀は炭を扱うときも普段の服のままだ。
せめて作業着にしたほうがよいと思うのだが、備長炭はかたく崩壊しにくいから
それほど衣服が汚れないという。
その夜雀から虫妖怪が新しい商売を始めたいというので相談を受ける。
祭りの時恋人同士を照らす蛍をレンタルするというものだ。
とても良いアイデアだと思ったのでゴーサインを出した。
虫妖怪はこれでも商売の考え方がシビアでとても好感が持てる。
香霖に爪の垢を煎じて飲ませたい。


薬屋に謎の商品を入れる。最初に応対したのはブレザー兎。
梱包を解いて中身を確認。 しばしの沈黙。
顔をたちまち真っ赤にさせてそそくさと薬屋のもとへと走る。
中身を見ると、大量のピルが満載されていた。


実は幻想郷の夏祭りではそこかしこで男女間で関係を持つことが多々あるのである。
祭りは幻想郷の住人にとってストレス解消の場であり、同時に顔を全て隠してくれる
仮面舞踏会のような存在でもある。
そして男女で祭りに参加すると、草葉の陰で甘い声が漏れ出すわけだ。
だが、ここで問題も起こる。 
祭りの時に”できて”しまうと多くの場合、水子として処理することになってしまう。
だがそれを河童が赦さないのだ。


そこで薬屋が避妊のための方策としてピルを売ろうと考えたようである。
考え方は悪くないが少々あざとすぎる気がする。
薬屋に話を聞いたら、発案は詐欺師兎らしい。
詐欺師兎は「この薬で死神の仕事も減るし、妖怪たちの憂いも減るってもんだ」と言っていた。
赤子が生まれては水子にされることは詐欺師兎にとってもあまり気分がいいものではないらしい。


薬屋は仕事が増えると少々躊躇いぎみのようだ。
まさか産めよ増やせよと思っていた幻想郷でピルを拝めるとは思わなかった。
なかなか難儀な話である。