□月 ●日  No702 今昔八雲商事


うちの会社の社員名鑑を読んでみる。博麗大結界が今の姿になるときにできた会社だが
成る程いろいろな人が在籍していたことがわかって興味深い。
中には見たこともない人の名前もある。 金伽羅とか神玉とか名前もどこか古くさい。


魂魄が昔を懐かしむような目で、金伽羅さんは今でも通用するくらい美人だったが
セクハラが酷かったとか、エリスたちの一派がその後ノーレッジ女史の司書になったとか
色々なエピソードを教えてくれた。 基本的な雰囲気は今も昔も変らないらしい。


久々に阿礼乙女のところへ配達に行ったので、うちの会社の昔を聞いてみた。
色々と凄い話を聞かせてもらった。
会社の金を持ち逃げしたのは良かったが追い詰められて幻想郷まで逃げて
妖怪に喰われそうになったところを保護された話とか、
不倫の恋で、嫁さんから逃げるために幻想郷へ行ってしまった人もいたらしい。
仕事中に心臓麻痺で亡くなった人がいて、仕方なしに中有の道で引き継ぎをしたこともあったそうだ。
そのとき丁度阿礼乙女も居合わせていたらしい。
帰らないのかと聞いたら、いい加減死なせてくれと言われたらしい。


まさかその辺の話も幻想郷縁起に書かれるのかと尋ねたら、
黒歴史ということで永遠に封印すると言うことだった。
あなたも私の黒歴史にならないようにねと言われたが、苦笑するしかなかった。
明羅女史が陰でくすくすと笑っていた。


ものはついでと甘粕に博麗の巫女が月の異変を解決したことを報告する。
一応朝倉に断りは入れておく。
甘粕は「そうか」とだけ答えると長い沈黙が続いた。
とても月に関しての昔話を聞ける状況じゃなかった。
人選を誤ったか。


ただ、まだこれで終わりではないというアドバイスをもらった。
小兎姫に起こったことが関係するのかと尋ねると、
甘粕は無言でテレビのチャンネルを合わせた。
そこには政府高官のスキャンダルと内閣総辞職の話題で持ちきりのワイドショーが
映し出されていた。
きっと小兎姫の居る霊能局も色々と動きがあるに違いない。


昔の体制が変化するとき、そこに隠されいたさまざまな歪みが
一気に明るみに出る。
月がもたらした異変は実はこれからだと再認識することになった日であった。