□月 ●日  No703 パイナップルアーミー


けだるい休日の朝。
徹夜明けで眠い目をこすりながら会社の近くのコンビニに買い物に出かける。
そこにどこかで聞いたような声で「ご主人」という言葉を耳にしたのでふと顔を上げてみると
ものすごい恰好をした女性が菓子パンを見繕っていた。
「ご主人」と呼ばれる女性も呼ぶ女性もそうそういるものではない。
紛れもなく岡崎と北白河だったが、すぐに岡崎と認識することができないほど凄い姿だった。


徹夜明けになると神経が鋭敏になるものだ。彼女の姿形全てが頭に入っている。
それくらい印象的だったとも言える。
Tシャツにジャージ姿。ボディラインのくずれ具合から明らかにブラジャーを付けていない。
頭はまるでパイナップルのように髪の毛が上げられていて、化粧気もないスッピンそのものである。
おまけになぜか四角いメガネもかけている。
サンダルはワンコインで買ったような猫のマスコットが書かれたものでずいぶんと薄汚れている。
一体いつ買ったのかは聞かない方がよさそうだ。


一方北白河はいつものように化粧もしていてきちんとキメていた。
とりあえず、挨拶をすると岡崎もまずいところを見られたというような表情で小さな声で挨拶した。
かごの中には菓子パンと牛乳が入っていた。


流石にコメントしづらくなったので、喫茶店でトーストでも如何と聞いてみる。
一刻も早くコンビニから離れたかったし、眠気覚ましでコーヒーを飲みたかったのもある。
そうしたらあっさりとOKが出た。 朝食の準備が面倒だったらしい。


茶店で会った岡崎はさすがにパイナップル頭を解いていた。
大慌てで薄化粧もしている。
メガネ姿は何故かと尋ねたら、普段はコンタクトレンズをつけているが面倒になったということだった。
ラフな恰好は朝倉でさんざ見慣れているので特に指摘するほどでもない。


私と北白河がフレンチトーストを頼んでいる中、岡崎は何故かパスタを注文。
聞けば北白河はこれから学生時代の友人とランチに出かけるそうで
岡崎としては朝と昼をここで同時に済ませる魂胆らしい。


北白河が日曜日に出かけるのは珍しいと思う。
だいたい土曜日にしこたま呑んで日曜日を調整日にしていることが多いからだ。
友人の都合が日曜しかつかなかったのだろう。


とりあえず適当に談笑したのち支払いは案の定私が払う羽目になった。
結局これ以上お金を使いたくなかったので一日寝て過ごしてしまった。
なぜか岡崎があのパイナップル頭で襲いかかってくる夢をみて
なんか寝起きが悪かった。