□月 ●日  No715 妖怪色彩工学

 

今日もあちこちで弾幕ごっこが繰り広げられている。
夏になるとあちらこちらで祭りが開催される。そしてお酒が入り美味しいものを
たらふく食べて元気が余った妖怪たちが喧嘩を始めてしまう次第。


遠くから見れば目で楽しむことが出来る弾幕であるが、ふと浅間が面白いことを
口走った。 見えない弾幕をつくれば、すぐに喧嘩が終わるのではないかと。
スペルカードルールの趣旨に反するかも知れないが成る程確かにそれは言えている。


スペルカードから発生される弾幕。これらはある一定のガイドラインによって支配されている。
それは数年に一回スペルカード開発に携わる各国の技術者ならびにスペルカード開発技術に
長ける幻想郷の技術系妖怪が一堂に会する会議で決まるらしい。
背景に溶け込む弾幕の禁止や、過度なフラッシュの禁止など多種多様である。
特に色彩に関するガイドラインは複雑である。


色彩マスターと言えばやはり七色の魔法使い人形遣いのアリスだろう。
たまたま出店で人形劇をやっているアリスを捕まえて話を聞くことが出来た。


彼女によれば、色彩というモノはそれぞれ沢山の謂われがあって無計画に使うと
とても危険なものらしい。 顕界でも色彩を上手に使えばある程度のステルス効果が
期待できるし、相手の気分を悪くしたり、体調を悪化させることも出来る。
妖怪の場合特に色の影響を受けやすい特性があるらしい。
それらを利用した弾幕ガイドラインで禁止されているわけだ。 


ガイドラインは破られないようにスペルカードの基礎プログラムで禁則事項として登録されているから
万が一そうした色合いの弾幕を生成するようにスペルカードを書き込んでも
発効することが出来ないようになっているそうだ。


ついでにアリス自身のことも聞いてみた。 人形遣いのアリスに言わせれば
単純に七色の魔法を使うだけでは七色の魔法使いにはなれないらしい。
無計画に色を配置すると目の錯覚や色同士の相互干渉によって、第八の色が具現化して
しまうのだそうだ。 この辺のノウハウはやはり人形遣いのアリスでないと難しいという。


朝倉でさえ人形遣いのアリスが使う七色の魔法をエミュレートするのは大変らしい。
七色の魔法は数学的な公式を幾重にも重ね、大量の試行錯誤をすることで実現できるという。
ノーレッジ女史が中途半端な曜日の魔法になってしまっているのも頷ける話だ。
さらに人形遣いのアリスは自分の衣装の配色から操る人形の配色まで厳密に計算して
色あいを決めているという。
七色を目指したがどうでもよくなって恋色などという第八の色を作ってしまったのは
霧雨のご息女だ。それはそれでいいかもしれない。



いい話が聞けたと思ったが、浅間はどうしても納得できない様子だった。
何故妖怪は色の影響を受けやすいのかである。
アリスにそのことを尋ねても苦笑して言葉を濁すだけだったからだ。



謎の答えはあとでカラーコーディネーターの資格を持っている岡崎から聞くことができた。
妖怪が色に影響を受けやすいのは少女の外見が関係しているらしい。
実は年齢によって色の見え方が違うのだという。 網膜がこなれていない子供の時は
はっきりした色合いが好きで年齢を重ねるとシックな色が好きになるのは、
加齢によって目の網膜が反応しきれなくなるからだそうだ。
つまり、少女の外見をしている妖怪たちは色彩感覚も少年少女に近いのだという。
どうやら、遠回しにババアと言いたいだけだったようだ。
とりあえずこの謎の答えは自分の心中だけにしまっておくことにした。