□月 ●日  No716 わらってしきえーき


詐欺師兎のせいでさんざ荒らされた中有の道が色々と復旧。
中有の道にある夜店を買収しておきながら結局潰してしまったため
地獄から救援依頼が来た次第。 地獄や魔界はあまり財政状況が芳しくないため
今回の事態はかなり頭の痛い問題だった。



ここに、そこへ至る顛末を書き記しておく。


そもそも詐欺師兎が中有の道の夜店を一気に買収できた理由は割と単純である。
彼女が行ったのは虚業のそれと同じで、企業を買収一時的に増えた売上金を元手に
次の店を買収するというものである。
このやり方は買収することで新たな収益構造が生み出されれば有効なのだが
実際問題中有の道という市場は広がるわけではなく単なるパイの奪い合いなのだから
このやり方はいつかは破綻する。
破綻しないようにするためには次の会社を買収する必要がある。
結果的に自転車操業みたいなものとなる。
詐欺師兎が悪質なのは、これらを分かっていながら行っていたことだ。
霊能局が事態に気づいて急行したときは既に詐欺師兎の姿はなく
気絶したブレザー兎がいるだけだったらしい。


ここから今日の今日まで中有の道の健全化が図られた。
ルールの中に買収やコンサルトの禁止も盛り込まれた。
元々は地獄からの脱却テストをするためのものである。趣旨に反するルールは取り除かねば
ならないだろう。
うちの経理部と霊能局のメンツが泣きながら会社の解体とそれに伴う資産分割をしていた。
詐欺師兎が地獄から融通された在庫品をあっちこっちに振り替え処理をしていた上
ご丁寧に帳簿もつけなかったのでさらに事態が悪化した。


この事態に一番キレたのは閻魔様だ。 外見上あまり迫力がないはずなのに
不動明王のような凄みを醸し出している。
まず最初に閻魔様から詐欺師兎にあるものを配達するように言われた。
詐欺師兎に遭遇するのが難しいことは知っているはずだが何としてもわたせというので、
永遠亭のメンツに詐欺師兎に届け物があると情報を流したら
案の定詐欺師兎に遭遇することに成功した。 わかりやすい。


差出人不明のその小包を開けた詐欺師兎の顔色が一気に変った。
彼女もそう言う顔をするんだといったところか。



中身はバリカンだった。



薬屋から詐欺師兎の様子がおかしいので何かあったのかと尋ねられたが
今いちわからないので知らないと答えておいた。



数日経って、いきなり詐欺師兎と兎軍団に捕まった。
体を紐でぐるぐる巻きにされて痛いことこの上ない。
このバリカンを送った奴は誰だと聞かれたが、集荷が違うと惚けてやった。
どつかれると思った次の瞬間。 周りに閻魔様の笑いが木霊した。
声の主に目をやるとそれは山の間から出現した巨大な閻魔様だった。
「戯れは終わりじゃ」と叫ぶ閻魔様の手には笏とバリカンが握られていた。



その後半月ばかり詐欺師兎の姿を見ることはなかった。
次に配達したときは、ショートヘアに揃えた詐欺師兎が無言で応対していたとだけ書いておく。
その日は経理処理の目処が立った日だった。 結果的に当社のスポンサーが乗り出したとだけ聞いた。



ついでに巨大閻魔様だが残念ながら山の間から出現したのでスカートの中身は拝めなかった
ことも書いておく。好きこのんでみるものではないと思う。